研究概要 |
建築物や土木構造物に対する現在の耐震設計では,レベル2地震動と呼ばれる「きわめて希であるが、非常に強い地震動」に対して,弾性範囲を超えた塑性領域に入ることを許容して,構造系全体が倒壊しなければOK,としている.従って震度7のような強烈な地震動の地域では,現状の耐震設計では相当な損傷が発生することは避けられず,地震後にその損傷を補修しなければならない. 本研究では,提案する新しい柱構造によって,損傷ではない塑性応答を実現化することを目的としている.提案する構造は柱を縦に分割する.ここで分割した柱部材に横拘束部材をあてがい拘束力を与えると,分割した柱部材の間に摩擦が働くようになり,その結果として復元力-変形量関係は通常の弾塑性と同じ挙動を示すようになり,与える拘束力を変化させることにより,復元力-変形量関係を制御できる. 平成21年度は,提案する柱構造の実物大化・鉄筋コンクリート化について検討する.厚さ15センチの鉄筋コンクリート板を3本程度集合させることにより,1辺45センチの柱模型を,拘束方法を変えて2体作成し,1方向曲げ載荷実験を行ない,実物大化・鉄筋コンクリート化における問題点の抽出とその解決法について検討した.また実験だけでは計測しきれない状態の検討を行うために実験の数値シミュレーションを実施した.その結果,摩擦材料としてステンレスまたは鉄が優れていること,PC鋼棒による貫通型の拘束部材が実物大では現実的であること,適切なせん断補強を行うことが部材強度を保持するために必要であることがわかった.
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