研究概要 |
近年の強震動予測法の発展により観測経験のない地震動の予測が可能となり,従来の設計用地震動にはない特性をもつ多様な巨大地震動が予測されている。これらの地震動に対しても有効な損傷評価,耐震改修技術,新材料や新構法の開発に取り組むことを目標に,鋼構造の主体骨組に必要な柱梁接合部の変形性能向上技術を実験的な検証を踏まえて開発するための研究を実施した。 1.多様な地震動を受ける建物の地震応答特性:予測地震動による建物の応答特性を把握するために,従来の設計用地震動とパルス性地震動に対する建物の応答を理論解と数値解析により比較検討し,これらの地震動による要求性能レベルを定量的に把握した。 2.変形性能評価法を構築するための梁端接合部実験:履歴依存型変形性能評価法の枠組みを確立するために必要な変形性能評価曲線の取得を目的とする実験で,角形鋼管柱と490N級H形鋼梁によるスカラップ形式の鋼構造柱梁接合部を対象に,塑性率1.2~4.0の範囲で4種類の振幅による一定振幅繰返し載荷実験を実施し,また,前年度の研究で設定した標準試験体に対して塑性率が2段階に異なる変動振幅による載荷実験を実施した。溶接接合部の亀裂進展によって決まる変形能力の限界と塑性率に関する定量的情報を得ると共に,前年度の標準試験体,既往の研究による400N級H形鋼梁の結果と比較して母材強度,スカラップの有無,梁ウェブ耐力と変形性能の定量的な関係を得た。 3.変形性能を向上させる柱梁接合形式の実験:従来鋼の標準接合形式とは異なる,円形鋼管柱と外ダイアフラム形式,高強度鋼溶接組立H形鋼柱または溶接組立箱形断面柱と従来鋼梁の完全溶込み形式,の部分架構実験を実施し,その設計法の妥当性と変形性能を実験的に検証した。
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