研究分担者 |
角田 誠 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (10180035)
岡部 明子 千葉大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (70361615)
藤田 香織 東京大学, 大学院・工学系研究科, 准教授 (20322349)
広田 直行 日本大学, 生産工学部, 教授 (00277394)
池田 靖史 慶恵義塾大学, 大学院・政策・メディア研究科, 教授 (20296768)
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研究概要 |
平成21年度は,A~Dグループごとに,国内外の事例調査を通じて,多用な再生設計におけるプロセスをそれぞれの専門分野から分析し,利用価値と耐震性を共に向上させる際の矛盾点にに対する解決策を導き出すことである.この成果を,次年度以降に行う適切な再生手法を総合的に判断する際の評価軸を示すことに繋げる. Aグループ(再生設計プロセスの体系化,再生設計の専門教育の実態調査):(松村)国土交通省が行っている耐震改修モデル事業に採択されたプロジェクトを対象にアンケート調査及び聞き取り調査を行い,建物再生時の利用価値向上に必要な事柄の整理及び問題点の把握を行った.得られた,結果をまとめて平成21年6月ローマで開催された国際会議(PROHITECH09)にてキーノートレクチャーを行った.更に,欧州の中でも特に建物再生教育が盛んであると同時に優れた再生事例が多く見られる3都市の大学(フランス:パリ・ラヴィレット建築大学,ドイツ・ミュンヘン工科大学,オランダ・デルフト工科大学)を対象として,教育体制に関する聞き取り調査を行うと同時に,建築再生事例データの収集・整理を行った. Bグループ(耐震改修を支える技術のデータベース化):(山田)鉄骨造建物の耐震診断事例をもとに、既存の建物における耐震改修上の問題点の検討に着手した。また、耐震改修に関する文献調査に着手し、データーベースの構築と併せて技術的な評価を開始した。(藤田)木質構造,特に木造住宅を対象とした耐震改修用の技術を網羅的に整理し,データベースを構築した.更に,文化財建造物を中心とした構造補強に関する事例の歴史を整理し,上記PROHITECH09にて発表を行い欧州の研究者と活発な議論を行った. Cグループ(建物の価値分析):(岡部)まちづくりの核として既存建物を改修した事例で注目されている複数事例において、耐震の位置づけを調査した。その結果、耐震性向上を主目的に改修を考えたケースは稀で、全般的な改修のなかで、エコ改修や耐震改修を行うか否かを合わせて検討している実態が明らかになった。(池田)設立当初の利用状態から大きく変貌した神奈川県女性センターの施設有効活用方策に関する事業化検討業務プロポーザルについて既存建物評価および、改修提案内容の分析をおこない、今後日本全国で増加が予測される公共建築の改修および再生活用の実現性に関して調査した。(山名)文化財的価値を持つ近代建築の改修における、改修前後の意匠的価値の変化を明らかにする研究を実施した。今年度はケーススタディーとして、坂倉準三設計の鎌倉近代美術館の竣工後の改修内容に着目し、実測および図面資料調査を行った。成果として、近代建築における機能性の向上を目的とした改修による創建時の意匠的価値への影響を、改修のメカニズムを詳細に検証することにより明らかにした。 Dグループ(関連法制度の整理):(角田)耐震改修手法と他性能向上との相互関係を明らかにし、空間特性に応じた効率的・効果的な性能向上を実現する耐震改修手法を提示した。また耐震改修を行ったRC造学校校舎を取り上げ、耐震性向上や教育環境維持のための要求を考慮した工法ついてVFMの観点から指標化し、耐震性・教育環境維持の両要求に応え得る総合的かつ効果的な耐震改修工法のあり方を示した。(広田)海外事例として,韓国のソウル特別市に設置された自治センターについて調査し,新築と転用事例の機能構成の違いと,転用を実施する際の法的仕組みを求めた。国内事例として,千葉県で最も転用事例が多い「青年館」の現状と,北海道の公的施設について転用施設の利用状況を調査した。
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