研究課題/領域番号 |
21246093
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 毅 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (20168355)
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研究分担者 |
吉田 伸之 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (40092374)
篠原 修 東京大学, 大学院・工学系研究科, 名誉教授 (70101110)
御厨 貴 東京大学, 先端技術研究センター, 教授 (00092338)
陣内 秀信 法政大学, デザイン工学部, 教授 (40134481)
中島 智章 工学院大学, 工学部, 准教授 (80348862)
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キーワード | ヴェネト / パドヴァ / ブレンタ川 / テリトリオ |
研究概要 |
今年度はいよいよ一連の研究のまとめの前段階と年であり、多くの比較調査が同時併行的に実施された。まずイタリア調査については10月中旬ピサにおいて国際ラウンドテーブルを開催するとともにピサ、リヴォルノなどのトスカーナ諸都市の現地踏査を皮切りに、研究分担者である陣内秀信、吉田伸之も参加してヴェネツィアの都市インフラと建築に関する実地踏査を行った。ヴェネツィア調査終了後、パドヴァに調査対象地を移し、パドヴァを拠点としながらブレンタ川沿いの都市、集落の現地調査および水路調査を進めた。またヴィチェンツァ、アゾーロ、キオッジアなどの諸都市を踏査して資料収集を行った。この調査によってインフラを基盤としながら、「領域」(イタリア語でテリトリオ)という概念が最重要鍵言葉として浮上し、テリトリオの構成要素としてさまざまな「分節(切片)」、すなわち都市・集落・耕地・緑地・牧草地・沼地などを有機的に連携する概念構築にむけて共同研究が格段に進んだ。具体的には東の沼・潟から西の広大に広がるヴェネトの平野、そしてパドヴァの南東に聳えるエウガネイ丘陵という、きわめて変化に富んだ地形条件を下敷きとしてさまざまな中小規模の都市、集落が分布し、土地利用形態も牧草地、ブドウ畑、オリーブ畑などが宅地やその他の土地と深い関係をもちながら存在している。19世紀の地籍図などの土地史料や古地図を利用しながら、こうしたテリトリオ全体を明らかにする方法の端緒がみられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた比較史の枠組みをはるかに超えた論点が浮上し、都市インフラの比較論のみならず、都市や集落さらにはインフラを包摂する概念として、テリトリオ的なアプローチが全面展開しつつある。この成果は最終年度に国際会議の開催をアウトプットの契機に位置づけることによってまとまる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
上記11に述べたように、都市インフラの比較史はもとよりテリトリオ的論点の獲得は、西ヨーロッパ全域を想定するとさらなる議論を誘導し、ヨーロッパ・ヘゲモニー都市の推移(マルク・ブロック、えまにゅえる・ウォーラーステイン)とその後背地との関係として最定位してみると、ヴェネツィア(ヴェネト)→アムステルダム(フリースラント)→ロンドン(アイルランド)の関係と、ひとつの中心であり続けたパリ(ラングドック)という図式が浮上する。今後、このような視点から予算の範囲内で調査対象を一部広げることを考えている。
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