研究分担者 |
市坪 哲郎 京都大学, 工学研究科, 准教授 (40324826)
才田 淳治 東北大学, 学際科学国際高等研究センター, 准教授 (20359540)
平田 秋彦 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (90350488)
八木 俊介 大阪府立大学, ナノ科学・材料研究センター, 講師 (60452273)
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研究概要 |
本研究では,アモルファス金属や金属ガラスなど金属非晶質固体の構造を,特徴的な3種類の基本構造[P(アモルファス相から晶出する結晶相の構造に似た原子配列を示す多面体),I(金属のガラス相を安定化させる充填原子配列を示す20面体的多面体),W(I,P以外の原子配列を示す多面体)]に分割し,系統的に調べ整理する「基本構造(P,I,W)の概念」によって,ガラス相の構造安定化の機構、緩和、ガラス転移、粘性(フラジリティー)などの諸現象を包括的に理解する学理の確立を目的とする.本年度は、特にこれら基本構造の割合を、添加元素の効果や熱的履歴の影響などで整理した。添加元素の影響としては、Zr基金属ガラスにPdの添加効果を調べて、結晶化によって析出する準結晶とアモルファス状態での20面体クラスターの関係を明らかにし、それに基づき、添加元素と基本構造Iとの関係について考察した。さらに熱履歴については、主に融体状態からの冷却過程での構造変化に焦点を絞って研究を展開した。特に、Zr基金属ガラスにおける冷却速度を制御し、緩和過程の研究、さらに緩和の進行による結晶過程を詳細に調べ、熱履歴によるアモルファス構造変化を考察し、晶出する結晶相との関係について考察した。その結果、冷却速度の低下によって、20面体クラスター的領域が発達し、これらが核となって準結晶が析出することが予想された。この事実は、Zr基金属ガラスへのPd添加の効果による晶出結晶相の変化と同じであることを実験的に見いだした。したがって、これら元素添加による局所構造変化と冷却速度の低下による構造緩和は、アモルファス中の基本構造Iの発達を促進することが明らかになった。さらに、安定な金属ガラスの代表であるZr基とPd基金属ガラスにおける静的な構造不均一を比較し、粘性などの物理特性との関わりについても議論し、論文にまとめ公表した。
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