研究概要 |
本年度は,電子状態計算により欠陥複合体を設計して試料に導入することで,欠陥誘起強誘電性を実現する.併せて,構造解析・電子状態解析により強誘電体・圧電体における欠陥の機能を明らかにして,材料設計指針を確立する. I欠陥誘起強誘電性の発現と高特性化 欠陥複合体の設計:電子相関を取り入れた電子状態計算(LSDA+U法)により,欠陥複合体を設計した.Cr^<4+>,Co^<2+>,Cu^<2+>はバンドギャップ内に不純物準位を形成し,BiFeO_3の絶縁性を低下させることが予想された.低価数イオンとしてZn^<2+>,Mg^<2+>とNi^<2+>を,高価数イオンとしてMn^<4+>とTi^<4+>を選択し,これらから構成される欠陥複合体を単結晶へ導入し,物性を評価した. 試料作製・物性評価:結晶の高品質化を目的として,結晶育成時の酸素分圧(Po_2)が強誘電特性に及ぼす影響を調査した.(1)低Po_2側では,Bi空孔・酸素空孔の生成が顕著になりドメイン反転が阻害され,残留分極(P_r)が低下すること,(2)高Po_2側では,結晶内にインクルージョンとして不純物が生成し,P_rが低下すること,を明らかにした.結晶育成時のPo_2を5×10^<-6>atmと固定して,様々な欠陥複合体を導入した結晶を育成して,特性を評価した.Zn^<2+>・Mn^<4+>複合体を導入した結晶において,バルク結晶で世界最高のP_r(84μC/cm^2)が得られた.Zn^<2+>・Mn^<4+>複合体が新しいナノドメインの核として機能することで,P_rの飛躍的な向上と抗電界の劇的低減(>100kV/cm→19kV/cm)が達成された.欠陥複合体によるナノドメインの導入が分極反転を誘起する「欠陥誘起分極反転」という新規な材料設計指針が確立された.
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