研究課題/領域番号 |
21246098
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
辰巳砂 昌弘 大阪府立大学, 工学研究科, 教授 (50137238)
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研究分担者 |
忠永 清治 大阪府立大学, 工学研究科, 准教授 (90244657)
林 晃敏 大阪府立大学, 工学研究科, 助教 (10364027)
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キーワード | 固体電解質 / 硫化物電解質 / ガラス / ガラスセラミックス / 全固体電池 / リチウム電池 / リチウムイオン / イオン伝導 |
研究概要 |
これまでに最大の導電率が得られている、70Li_2S・30P_2S_5(mol%)組成のガラスからのLi_7P_3S_11結晶の析出条件を詳細に検討した。DSCを用いて核生成速度が最大となる熱処理条件を決定した。210℃で30分間の核生成を経た後、280℃で1時間の結晶成長を行う二段階熱処理によって、70Li_2S・30P_2S_5ガラスセラミックスの室温導電率を5.2×10^<-3>Scm^<-1>まで高めることができた。また修正Kissingerの式を用いて、硫化リン系ガラス(70Li_2S・30P_2S_5)の結晶成長の活性化エネルギーを求めたところ、209kJmol^<-1>となった。この値は、硫化ケイ素系ガラス(60Li_2S・40SiS_2)の活性化エネルギー(209kJmol^<-1>)と比べて、若干小さい値であることがわかった。 硫化物系固体電解質の化学的安定性の向上を目的として、Li_2S-P_2S_5系ガラスのP_2S_5の一部を酸化物であるP_2O_5で置換したLi2s-P2s5-P205系オキシスルフィドガラスを作製し、大気中での構造変化について検討した。75Li_2S・15P_2S_5・10P_2O_5(mol%)ガラスのラマン分光測定の結果から、この組成のガラスの主たる構成単位であるPS_4^<3->イオンが、大気に一日さらした後でも保持されていることがわかった。75Li_2S・15P_2S_5・10P_2O_5ガラスからのH_2S発生量を検討したところ、75Li_2S・25P_2S5ガラスと同様にH_2S発生量は著しく少なく、H_2S発生速度については75Li_2S・25P_2S_5ガラスよりも小さいことがわかった。以上の結果から、硫化物への酸化物の添加が、大気安定性向上に有効であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
硫化物固体電解質の組成や結晶化条件についてはほぼ検討を終え、室温で5.2×10^<-3>cm^<-1>の高い導電率を示すガラスセラミックスを得ることに成功している。また、硫化物電解質の大気安定性の評価手法を確立した。作製した電解質を用いた全固体電池の作動特性については評価を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、硫化物固体電解質のより一層の大気安定性の向上と全固体電池における電極-電解質界面評価に取り組む。固体電解質の特性や構造が、電極界面における抵抗・構造・微細綻職に及ぼす影響について調べることによって、全固体電池のパフォーマンスを高めるために固体電解質が備えるべき要件を明らかにする。
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