研究概要 |
21年度は2次元位置敏感型検出器を高透過能型X線小角散乱装置に導入し,この結果、これまでのマルチワイヤータイプの位置敏感型ガス検出器と比較し,Yを含む系のhigh-q領域でのバックグラウンドレベルをおよそ半分程度にまで抑えることに成功した。あわせて、検出ガスによるスメアリングの低減により、異なるコリメーション間の接続性が試料によらず安定し,強度定量性の大幅な向上に寄与した。これを用いて加工を導入した純鉄試料の小角散乱測定を進めている。このうちhigh pressure torsion試料では無加工試料と比較して明瞭な散乱強度の向上を確認した。他には析出物を含まない実用鋼、析出物の形状が異なる実用鋼において熱処理条件を変えた試料の測定を行った これらの試料を定常炉中性子源3号炉を利用して中性子小角散乱測定を行う予定であったが当該炉の補修長期化により中性子実験の機会が1回に限定され,析出物を含まない実用鋼の測定に留まった。しかし、この実験において水素有無の散乱強度の差を検出した。強度差は炭化物のサイズに相当するq領域に観測されたため,炭化物の析出しやすい転位密度の高い領域に優先的に水素がトラップされたためと解釈可能であり,現在、再現性の確認等を進めている。3号炉は21年度末より再開し,現在、中性子測定が順調に進んでおり,22年度はマシンタイムの制約なく、計画進行できる見込みである。
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