本研究では、宇宙の特殊な環境におけるウィスカ発生・成長メカニズムを解明し、これに基づき抑制策の提案することを大目標とする。これまでの研究で、真空中で以上成長を示す温度サイクルウィスカの形態を明らかにした。この従来の成果に加えて、真空中で以上成長するメカニズム、さらに、一般の温度サイクルウィスカがなぜ折れ曲がった形状で成長するメカニズムを解明する。本年度は、1)温度サイクルウィスカに対する真空環境の影響パラメータの詳細、2)表面コートの効果に注目した。 大気中の温度サイクルにおけるウィスカ成長が、曲がりくねった特異な形状になる原因が、Sn表面の酸化膜形成に影響されることが判明した。Snの表面には、めっき状態で10nm程度のアモルファスに近い酸化膜に覆われるが、大気中の温度サイクルにより酸化が進行し、SnOへ結晶化すると同時に、温度サイクルで粒界割れが発生し、応力腐食のように粒界割れ-酸化膜形成が継続する。結晶粒からウィスカが発生すると、根本の粒界が割れ、深い溝が形成される。この溝内の酸化膜形成-酸化膜割れにより、成長するウィスカに対して不均一摩擦が生じ、曲がりくねったランダム形状のウィスカ成長が繰り返す。また、1温度サイクルで1つのリングがウィスカ周りに形成されることを見出し、ウィスカ成長速度の計測を可能にした。真空中の異常ウィスカ成長は、酸化の影響の無い環境でウィスカ成長を抑制する力が欠如することであると解明した。
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