研究概要 |
これまでに開発してきた高強度Ni-Wナノ結晶電析合金は、ビッカース硬度がHV600程度で、引張破断強度が2000MPa以上にも達するが、引張変形時には、上述のShear Bandを生じて脆性的な破壊挙動を示した。しかしながら、Ni含有量の増加とともに、サブミクロンレベルの粒組織が見られるようになり、その粒界面部分は、厚さ2nm程度のNiが高濃度に偏析したナノ薄膜構造を有し、さらに、そのサブミクロン粒子内部は、数ナノメータサイズのナノ結晶粒子の集合体構造となる2重のナノーマイクロ構造が形成されていることが明らかとなった。このように、超硬質のナノ結晶粒子がサブミクロンサイズの集合体を形成し、これが軟質のNi-richナノ薄膜層に被われることにより、このナノ薄膜層が変形パスとして作用し、塑性変形サイトを分散することにより、硬質材料にも関わらず、引張塑性変形能と加工硬化性能を発現させていると推定される。このような、2重のナノーマイクロ構造が形成されている試料を用いて引張試験を行ったところ、引張破断強度は3,347MPaであり、均一な構造の試料の3,160MPaに比べ高い強度を示した。600℃で2時間加熱処理すると、引張強度が僅かに強度が僅かに減少した。 Zr-系金属ガラス合金については、Zr_<55+X>Cu_<30-X>Ni_5Al<10>(X=0,5 and 10 at.%)およびZr_<65>Cu<18>Ni_7Al_<10>金属ガラス合金において、Zr-richな組成になるほどTgの低下が観察され、同時に、結晶時の主な析出相が準安定相Zr_2Ni(fcc)から安定相Zr_2Cu(bct)へと変化するZr-richな合金組成領域でT_xの大幅な上昇が観察された。その結果、Zr_<65>Cu_<18>Ni_7Al_<10>合金組成において、△T_xが最大値を示し、過冷却液体の粘度も最も小さな値を示した。このような△T_xの大きな合金組成の金属ガラスは、構造緩和中の脆化も生じがたい傾向が観察された。以上のように、均一なアモルファス等の構造を持っ試料は塑性変形が局所的に生ずるが、組成に不均一性がある試料では塑性変形量の増大が観察された。
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