研究課題/領域番号 |
21246112
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
山崎 徹 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (30137252)
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研究分担者 |
菊池 丈幸 兵庫県立大学, 工学研究科, 助教 (50316048)
三浦 永理 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (70315258)
藤田 和孝 宇部工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (10156862)
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キーワード | ナノ結晶合金 / 電解析出法 / 金属ガラス / 力学特性 / 成形加工 |
研究概要 |
電析条件を制御することにより、アモルファスおよびナノ結晶組織を有する種々のNi-W合金を作製し、これら合金の引張試験時の塑性変形挙動と、ナノ結晶合金において観察される加工硬化現象の発現メカニズムについて考察した。電析時の電解浴温度を60℃から30℃に低下させ、電流密度を200~500A/m^2まで増加させることにより、W含有量が23.6at.%から14.4at.%の範囲で合金を作製することができた。Ni-22.3at.%W電析合金ではアモルファス組織が観察されたが、W含有量が20at.%以下では結晶粒サイズが約5nmのナノ結晶組織が観察された。いずれの組成においても引張破断強度は約3000MPaとなり、非常に高い強度を示した。アモルファス構造を有するNi-23.6at.%W合金では、約2%の弾性変形の後に脆性的な破壊を示したのに対し、W含有量が低下してナノ結晶化すると、約2%の弾性変形に加えて、Ni-18-2at.%W合金においては約0.8%の加工硬化を伴う塑性伸びが観察され、Ni-14.4at.%W合金においては大きな加工硬化の後、徐々に加工軟化が生じで、破断時の塑性伸びは約2%に達し、破面近傍で大きな断面収縮がみられ、破面上ではディンプルパターンが確認された。本合金の引張試験の破面表面からFIB加工により深さ方向に薄片を切り出し、TEM観察を行ったところ、試験片内部の結晶粒径は5nm程度であったが、引張破面付近では20nm程度まで粒成長が認められた。これらの結果から、引張試験時の加工硬化および加工軟化現象は、塑性変形領域における局所的な結晶粒成長が原因であり、結晶粒サイズが20nm以下の領域で報告されている逆ホールペッチ則による結晶粒成長に伴った硬質化が生じ、加工硬化現象として観察されたものと推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノ結晶合金の引張試験時の加工硬化現象は、塑性変形領域における局所的な結晶粒成長が原因であり、逆ホールペッチ則による結晶粒成長に伴った硬質化が生じ、加工硬化現象として観察されたことがほぼ明らかとなった。これにより、硬質のナノ結晶合金においても大きな塑性変形を発現できることが明らかとなり、新材料の開発指針が得られたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
高硬質のナノ結晶合金に加工硬化現象を発現させるためには、初期結晶粒径を約20nm以下に抑制するとともに、塑性変形中の結晶粒成長を生じさせることが必要と考えられる。このため、各種のアモルファス合金から結晶粒径が約20nm以下のナノ結晶化を生じさせる方法を開発し、加工硬化が発現可能なバルクナノ結晶合金の開発を検討する。また、結晶粒成長挙動の温度・組成依存性を検討し、最適の合金設計指針を明らかにする。
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