生産量の増加が著しい太陽電池の原料となる高純度シリコンを安定的に安価に製造する新プロセスを開発することを目的とし研究を進めた。本研究では、凝固精製による除去が難しいリンおよびボロンを除去対象とし、電子ビーム溶解を行う間に溶融シリコンに水蒸気を添加する水蒸気添加電子ビーム溶解の1プロセスでシリコンよりリンおよびボロンを同時に除去することを考えた。通常の電子ビーム溶解処理では、リンは除去可能であるが除去速度が遅い問題があり、ボロンは除去することができない。このため、脱リン速度の高速化と水蒸気などを添加することによる脱ボロン法の開発が必要である。平成21年度は、この手法による脱リン速度の高速化のため、溶融シリコンの表面温度、溶融シリコンの攪拌、チャンバー内圧および反応性ガス(水蒸気)の添加などの脱リン速度に対する影響を調査した。また、電子ビーム溶解は、通常は高真空中で行なわれるため、真空チャンバー内に反応ガスを導入することは難しい。そこで、高温でも使用可能な水蒸気専用マスフローおよび真空チャンバー内部に上下に稼動するノズルを設け、一定流量の水蒸気をチャンバー内に供給できる機構を開発し、これを用いることで水蒸気を添加電子ビーム溶解処理の手法を確立した。さらに、シリコン中のリンおよびボロンの熱力学測定のための雰囲気制御型クヌーセンセルー質量分析装置を設計・試作した。これを用いて、高温でのボロンと水蒸気の反応について調査した。
|