真空中での電子ビーム溶解により溶融シリコンからリンおよびボロンを揮発除去するための手法を探索した。このとき、溶融シリコンの表面温度が電子ビームの出力に依存することを想定し、リンおよびボロンの除去速度の温度依存性を調査した。また、溶融シリコンに反応性ガスである酸素・水蒸気混合ガスを吹き込むことにより、リンおよびボロンが酸化物などの化合物となり除去が促進されるかを検証した。 リンについては、酸素・水蒸気混合ガスを吹き込むことによりリンの除去速度が影響を受け、いくつかの条件において脱リン速度が向上する結果を得た。反応性ガスの吹き込みによりリン除去が促進される場合は、リンがPOなどの気体となって蒸発していると予想される。リンの除去速度には大きな温度依存性が見られ、本研究では活性化エネルギーを見積もって反応の律速過程について考察した。 ボロンについては、多くの実験条件においてシリコンからの除去が確認されなかったものの、特定のビーム出力およびガス混合比率においてボロン濃度の減少が見られた。反応性ガスによるボロン除去が可能であることが示唆され、適切な表面温度および酸素・水蒸気比率を選択することが重要と考えられる。 質量分析法による熱力学測定では、シリコン中のリンの蒸気圧を測定した。本測定により得られたシリコン中リンの熱力学的情報は、溶融シリコンからのリンを除去するための条件を最適化するにあたり、有用な知見となる。シリコン中のボロンについては蒸気圧が低いために同様の測定は難しいが、純ボロンを測定試料とし、酸素等と共存させることによりボロンが化合物となって蒸発することが示されている。
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