研究概要 |
溶液中での「酸化・還元反応」や固液共存状態あるいは錯体形成を利用した「濃度制御手法」を取り入れた新規な「単一・液相プロセス」を提案し,数十ナノメートルレベルのコモンメタル・ナノ微粒子の合成を目的として研究を行った.硫酸銅水溶液にアンモニア水とゼラチンを加え,pH12に調整することで水酸化銅を沈殿させ,水素化ホウ素ナトリウムを加え313Kで30分間撹伴し銅ナノ粒子を合成した。その際の還元過程を観察・評価することにより銅ナノ粒子の生成過程の解明を行った.反応時間毎の生成物のX線回折,電子顕微鏡観察,粒度分布解析,反応過程における酸化還元電位および電気化学インピーダンス測定から考察を加えた.反応は5分以内に終了し,前駆体の水酸化銅表面の多くの場所で銅の格生成が生じ,それが粒成長することで微細銅微粒子が形成することが明らかとなった.また,得られた粒子は粒径約30nmで分散性の高いものであることが確認された. 化学還元法で使用される代表的な還元剤には次亜リン酸,水素化ホウ素ナトリウムなどが挙げられるが,これらはリンやホウ素が金属微粒子に不純物として取り込まれる可能性がある.一方,ヒドラジンは,反応により水と窒素のみ生成し不純物混入がない.そこでヒドラジンを還元剤に用いてコバルトナノ粒子の合成を行った.硫酸コバルト水溶液とヒドラジンを混合しpH14で反応させると生成物は水酸化コバルトのみであったが,溶液中にくえん酸を添加すると生成物は金属コバルト粒子になった.コバルトイオンの還元挙動を分極曲線から評価したところ,くえん酸には還元反応を促進する効果のあることがわかった。得られた粒子の形態はヒドラジン濃度により異なり,濃度の低下に伴い樹枝状に変化していくことが確認された.また,合成反応中の電位とpHの測定から反応過程のメカニズム解析に有用な指標が得られた.これにより還元機構を,「統一的ポテンシャル制御」に立脚したプロセス解析に結び付けられるものと考えられる.
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