研究概要 |
水溶液中での「酸化・還元反応」や固液共存状態あるいは錯体形成を利用した「濃度制御手法」を取り入れた「単一・液相プロセス」により,数十から数百ナノメートルレベルのニッケル,銅,ユバルト等について,形状を球状や針状に制御して合成を行った.また,反応過程を電気化学的に調査した. 銅ナノワイヤの合成では,臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTBA)を分散剤とし,弱い還元剤であるアスコルビン酸を利用することで,100ナノメータ径で200マイクロメータ長さ程度の針状析出物が得られた.CTBAが析出過程でテンプレートとして働くことで,CTBA濃度の増加により析出銅の形態は,微細球状,棒状,平板状と変化した.反応過程の酸化・還元電位は反応の開始により上昇し,反応終了で低下することが判明した.反応過程を電位-pH図と混成電位図により議論した.作製した銅の安定性に及ぼす各種添加剤の効果について検討を行った. 一方,コバルトとニッケルの合金について,ヒドラジンを還元剤として合成を行った.単体金属の合成では,コバルトはクエン酸を添加することで1マイクロメータ径の凝集体やデンドライト状のε-Coが析出したが,それ以下のサイズダウンはできなかった.水溶液中にコバルトイオンとニッケルイオンを共存させ合金にすることでα-Co,Ni(Niが30mass%以上)が析出した.析出物は単分散に近い数百ナノメータの分散した球状粒子となった.この結果を,Co-Ni合金状態図と対応づけて議論し,hcp構造は微細な粒子の形成が困難であること,合金化によりbcc構造に変えることでサイズダウンが図れることが判明した.また,合成反応中の電位とpHの測定から反応過程のメカニズム解析に有用な指標が得られた.
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今後の研究の推進方策 |
これまで実施した研究成果をもとに,ニッケル,コバルトおよびその合金ナノ粒子の合成,プロセス条件の決定,有機添加剤によるナノ粒子間の凝集制御,酸化抑制についての検討,粒子合成時の還元メカニズムの検討,形状制御法等について実験検討を行う予定である. さらに,工業的応用についても検討を加える.
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