研究概要 |
21年度の研究目的は、ゼオライトの細孔入り口構造が8員環ゼオライト,例えばSAPO-34をはじめとする各種ゼオライトにおいて、プロピレンへの選択率を高め、触媒寿命の向上を図るため、細孔入口径、酸強度、粒子径などの諸因子が触媒活性や寿命に及ぼす影響を把握すること、さらにこれを基に今後の研究の展開を図るための研究指針を示すことであった。 本年度における研究成果を以下にまとめた。 1)酸強度の高いゼオライトはプロピレンの生成速度が高い。 2)SAPO-34ではその結晶粒子の大きさによって触媒活性が大きく影響を受ける。 ・結晶粒子径が小さい程,触媒活性が高く,しかも触媒寿命が長くなる。 ・プロピレンの選択率は結晶粒子の大きさに依存する。結晶粒子の大きさ4μm以下のでは,プロピレン選択率80%を示す。一方,結晶粒子の大きさが小さすぎると,外表面の影響によって,プロピレン選択率が低下する。 3)ゼオライトの細孔入口径はプロピレンの選択率に影響する。しかし,プロピレン選択率は入り口細孔径よりゼオライト細孔の空洞の大きさに強く影響を受ける。言い換えるとゼオライト細孔の空洞の大きさが,およそ200Å^3であるときに高いプロピレン選択率を示す。この現象は細孔入口構造(8員環,10員環,12員環)によらない。 これらの知見を活かして、以下に述べる研究に展開をはかる 1)SAPO-34、ZSM-5等のプロピレンの生成に特異的なゼオライト結晶に新たに空洞を設ける、またナノシート状のゼオライトを合成する等により、反応活性点の失活を抑制し、有効に利用することによって触媒性能を向上させる。 2)ゼオライトの局所構造についてMAS-NMRなどを用いて解析し、従来の粒子状ゼオライトの局所構造と比較しながら高い活性を示す活性点構造を明らかにすることによって触媒性能を向上させる。
|