研究概要 |
プロトン交換ゼオライトによるヘキセンやオクテンの分解反応は,それぞれが対応するカルベニウムイオンのβ切断によってプロピレンを生成する。このときカルベニウムイオンの大きさがゼオライトの細孔空洞容積と一致したときに選択的にβ切断が進行することを見出した。この実験結果は,特定のカルベニウムイオンがβ切断を起こしていることを示している。 例えば,エチレン転化反応によるプロピレン生成反応では,オクチルカチオンの大きさとほぼ等しい空洞容積をもつゼオライトを触媒とすると,選択的にプロピレンが生成した。この現象は細孔入口構造が8員環,10員環,12員環のゼオライトに共通する現象である。 また,反応物質を1-ブテンとしても,プロピレンを選択的に生成するゼオライトは,オクチルカチオンの大きさとほぼ等しい空洞容積をもつゼオライトであった。このことはエチレン転化反応によるプロピレンの生成は,エチレンからブテンまたはブチルカチオンを経由し,これらの二量化反応で生成するオオクチルカチオンのβ切断反応によってプロピレンが生成することを示唆している。 一方,ヘキセン分解反応によるプロピレン生成反応では,ヘキシルカチオンと同じ大きさの細孔空洞容積をもつゼオライトは,選択的にプロピレンを生成した。 上記の実験結果は,細孔入り口径の大きさよりおも細孔空洞容積がプロピレンの選択性を支配していることを示している。即ち,従来から提案されているゼオライト触媒の遷移状態規制のコンセプトとは異なっている。
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