研究課題
宇宙飛翔体用推進剤に低毒性かつ高性能であるHAN(Hydroxyl Ammonium Nitrate)系推進剤を実現するにあたり、本年度は推進剤の着火方式ごとにデータを取得した。[触媒着火]HANと共に、ブレンドしたメタノールについても共通で分解できる触媒をオープンカップ試験およびスラスタ燃焼試験により検討し、両成分を効率的に分解できる触媒および燃焼器内部の設計パラメータを得た。併せて触媒が劣化せず、触媒反応が維持される触媒温度に保持できる燃料流量パラメータも取得した。[電気着火]推力1Nクラスの推進機内の圧力上昇は20気圧程度となるため、真空環境から比較的高圧下における幅広い圧力環境下での放電プラズマの生成・維持が必要となる。そこで大気圧プラズマに着目し、その生成を試み、性質、特性を調査した結果、大気圧付近において低電力で放電が維持できることを確認し、分解反応促進機構に適用できるプラズマに対する指針を得た。[アーク放電着火]HAN系推進剤の燃焼生成物であるH_2O、CO_2、N_2を用いて10kW級直流アークジェットスラスタの噴射実験を行い、基礎放電特性、放電電極の損耗状態、作動安定性を調べた。電極構造を変化させた場合、電極間距離が縮まるにつれて、放電電圧が減少した。45°円錐状陰極の放電電圧、損耗率は共に半球状陰極のそれらに比べて減少した。純タングステン円錐状陰極の放電電圧は銅入りタングステン陰極のそれに比べて大幅に増加したが、600秒以上の安定作動が達成された。さらにアーク放電でHAN系推進薬の燃焼を促進する推進機の研究に関しては、現有する電磁比例調整弁とコリオリ式流量計を当該推進薬に適応するように準備を終えた。また、予備実験として、対向した電極にアーク放電を誘起し、そのプラズマにHAN水溶液を噴霧し、触媒を用いなくとも燃焼反応が誘起されることが確認できた。
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Combustion, Explosion, and Shock Waves Vol.45, No.4
ページ: 442-453
International Journal of Energetic Materials and Chemical Propulsion