本研究では、、当研究所の大型水槽を用いて、浮体モデルの耐波浪実験を行った。同時に強風を想定して水面上に送風機を並べ、浮体上の風レンズ風車への風荷重を与えた。その結果、レンズ風車2基搭載の六角形浮体は、ピッチング、ヨーイング、ローリングに対しては十分な安定性能を示した。スウェイ(流れ方向の移動)はある程度の移動を示したが、係留方式によって十分に制御できることが分かった。大型風洞では、レンズ風車の浮体搭載用の耐風特性を実験した。その結果、レンズ風車を多脚で支持すると十分な強度特性(風速60m/sまでは十分剛性がある)を示した。複数のレンズ風車の後流干渉を数値解析で検証した。風車が風向に対して並列配置であれば、複数の風車の発電性能は低下しないが、風の方向に対してタンデム(直列)配置になれば、下流風車の発電性能は大幅に低下した。したがって、浮体の設置状況、また浮体上での風車の配置を、そのサイトの風況特性を十分に吟味した上で決める必要があることがわかった。最後に、他の大きな予算で、この浮体式風力発電のプロトタイプを博多湾に設置して野外実証実験を開始することができた。その浮体の大きさは18m外形で140トンの排水量である。その上に3kWレンズ風車を2基搭載して洋上の発電性能を調査中である。この浮体は当初計画したとおり、コンクリート製であるが、その断面中央め配筋は残念ながらSCFロッド(超炭素繊維材料)の製作が間に合わず、普通の防錆鉄筋を採用せざるを得なかった。SCFロッドは現在10m長さを製作できるロボットがようやく完成した。今後はより大型化し、実用的な浮体式風力発電として実現するための基礎設計を行う。そのために現在、博多湾浮体で取得中の様々なデータ(耐波浪データ、動揺特性、海上自然風、発電性能など)を検討し、次のステージへ活かせるように解析を進ある。
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