研究概要 |
前年度に調査した断層を3次元的にかこめるようなAEセンサのネットワークのインストールをおこないデータの取得を開始した.鉱山地下坑道からドリリング可能な場所の制約および,ドリリングの時間・コストの制約下で,そのようなネットワークを構成するためには,1つのボアホールに複数個のセンサをインストールする必要があり,そのための新たなグラウト工法を開発した.さらに,ボアホールインスタレーションの応力にたいする耐力と岩盤への音響カップリングを向上するため,摸擬ボアホールでにインストール実験をくりかえし,可能な限り砂骨材の配合割合を高めたグラウトを使用した.また,ネットワークが100m程度にわたるため,AEセンサのアナログ出力をつたえる信号ケーブルが長くなり,雑音,クロストーク等の問題が発生したが,ケーブルを同軸ケーブルにかえることで解消した. 22年度末時点では,センサ数がまだ6点程度であったが,観測システムに組みこまれている即時震源標定プログラムに,簡易的にもとめたセンサ位置を入力して震源位置標定をおこなったところ,採掘前線に近いところにクラスターが認められ,多くの鉱山の観測網ではとらえられない小さな地震にたいして震源決定が可能な品質の波形データが得られていることが示唆される.センサは,現在も順次増設中であり,密度と観測範囲が拡がるにつれて,検出限界と震源決定精度の向上がみこまれる.観測装置を鉱山外から監視・操作するためのインターネット接続を確立したが,活発な地震活動と鉱山の作業による振動ノイズのためにトリガが頻繁で,データ量は,1週間に500GB程度になるので,週に1度程度地下の収録装置からハードディスクにコピーして日本に送付している.
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