研究課題
Mw-5(破壊領域数cm)の微小破壊を数百メートルの領域にわたって検出・位置標定する我々のAE監視は,鉱山採掘域の周辺でおこる破壊について様々な新知見をもたらした.採掘域の前方直近の岩盤内は最もAE活動の高いところであり,発破の直接的な影響を受けるそのような部分での破壊は,自然地震とは異ったサイズ分布を示すといわれていたが,従来とは質量ともに桁違いのデータによって,それは発破自体を岩盤破壊と区別できていなかったせいであって,発破自体の記録を取りのぞけば,とりもらしなく観測できたMw -4から,統計的に意味のある数のイベントが観測できた上限であるMw1まで,その規模別頻度分布はひとつの羃則にのることが示された.発破の直後1分だけをみても,発破後1日以上たっておこったイベントだけをみても,同じ羃則にのる.このような採掘域直近に大量に発生する微小破壊は,雲状の体積的な分布であるとみなされてきたが,良質のデータにより震源位置を精密決定することで,大多数は最大剪断応力面に沿った10m以上の少数の巨視的な面に集中していることがわかった.採掘域直近の微小破壊といえども,孤立したクラックの活動ではなく,まとまった剪断破壊帯としての活動が主であることは,前述のように自然地震と同じべき則分布をすることと調和的である.センサ設置用のボアホール掘削で取得されたコア及び他の金鉱山から採集されたコアを用いた室内破壊実験では,鉱物の配向というレベルでの弱いフォリエーション組織がAEの発生と最終破壊面の形態に大きな影響を及ぼすことが分かった.フォリエーションの方向が破壊し易い方向と一致する場合、AEは一枚か複数の平行な薄い面に集中し、最終破壊面は平坦であった.一方、フォリエーションの方向が破壊し易い方向と一致しない場合では、AEが複雑なクラスタを示し、最終破壊面も複雑なダメージゾーンを示した.
1: 当初の計画以上に進展している
同サイトでの他予算によるセンサ(加速度計)との統合処理でマグニチュードの絶対値を合理的に決められたことから,規模別頻度分布に関して予想以上に強い結論が得られた.また,進行中の採掘域直近でのイベントの時空間密度は予想以上で,1分などという時間分解能で規模別頻度分布が求められたのも期待以上である.さらに,このようなすさまじい応力擾乱下の活動すら,巨視的なクラックに支配されているということは,予想外であり,そのようなクラックが大きな影響を及ぼすである採掘域直近の岩盤の安定性評価,大規模な山はねの予測に微小破壊のモニタリングが有用であることを強く示唆する.
大きなイベントの発生の可能性があるので,観測は継続する.採掘域直近で微小破壊が描きだす巨視的クラックは,その方向からみて,採掘応力によって岩盤内に新たに形成されたものである可能性が高い.類似波形を用いたローカルな震源再決定によって,巨視的クラックの内部構造をあぶりだし,岩石実験等から提案されている新生剪断面の形成のメカニズムと比較する.また,観測期間中,採掘前線は,このような巨視的クラックの間隔以上に移動したので,各巨視的クラックの活動の時間的変化と採掘前線の移動の比較を行う.前年度までの室内実験で得た結果を吟味し、現地から採集した断層面周辺の岩石試料を用いて室内実験を実施する。これにより、既存の微視構造の役割や、微小破壊から大規模破壊に至るプロセスなどについて考察し、原位置AE観測データの解釈に資する基礎データを得る。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件)
8th International Symposium on Rockburst and Seismicity in Mines (RaSiM8) Proceedings
巻: 8 ページ: in press
Progress in Acoustic Emission
巻: 16 ページ: 181-186
巻: 16 ページ: 175-180