研究概要 |
本研究は高ベータトカマクプラズマの定常化にむけた研究課題として"突発事象を支配するメゾスケール物理解明とマクロ系制御"という観点で、"開放磁場配位から閉磁気面の独立"、"2つの閉磁気面の接触"、"閉磁気面と開放磁気面の接触"等の状況下での磁気再結合によるマクロ構造形成過程とその制御性を調べることを目的としている。具体的な対象として(1)非誘導方式での開磁気面配位からの閉じ込め配位の形成過程、(2)定常プラズマの周辺部の開放磁気面を横切るBLOB(プラズマ塊)伝播などに着目した。これらは、定常プラズマ運転に関わる"突発事象"であり、それぞれ、電流立ち上げ、高プラズマ圧力の維持、揺らぎと構造の形成という点で物理解明とその制御が必須のものである。本研究では多階層物理描像のもとで、ミクロな背景乱流のもとでマクロな構造変化が起きる現象の中からメゾ系のみに特有な現象を抽出する事を目指した。本研究の取組としては、位相緩和時間で評価するメゾ系とマクロ系の"結合力"の定義付けを行い、その連続制御の可能性から定常運転実現への手法確立の展望を切り開くことを最終目標としている。 (1)高周波(周波数8.2GHz ~100 kW)印加による方式で開放磁場配位から誘導電場を用いることなくプラズマ電流を立ち上げる事に成功し、世界最高の35 kAを達成した。物理的には閉磁気面形成過程を高速カメラ、X線のエネルギースペクトルの時間発展、Li beamによる磁気面形成時の発光等を計測し、高周波駆動の高速電子に着目して、開放磁場配位のミラー比と強度を変えた実験と軌道解析の手法を併用して以下の理解に達している。装置容器の小アスペクト比が複数のECR領域の共存を可能とし、高縦横比と強いBz印加が高エネルギー捕捉粒子の軌道損失低減に効果がある事を明らかにした。高エネルギー電子(・10 keV)がEC波印加直後に生成され、効率よく閉じ込めるための高ミラー比(M) ・高Bz磁場配位を提案し、低域混成波と遜色ない電流立ち上げ効率(0.3-0.5MA/s)を得た。特にトーラス内側にポロイダルヌル点を有する自発ダイバーター配位(高ポロイダルベータ平衡)が新たに形成されることを見いだしている。特に研究課題との関連では閉磁気面形成時に揺らぎが磁気面方向に非常に長い相関長をもつことを見いだし、メゾ系特有の現象が磁力線再接続と閉磁気面形成領域の同定に有効であることを示した。 (2)開磁気面のみ、あるいは閉磁気面と開放磁気面の接触領域に関して揺らぎの統計的性質、プラズマの輸送に関する研究を行い、Blob揺動の発生箇所の統計的決定、その2次元構造、blob 伝播と加速過程、さらにプラズマ内部の流れ計測という課題に対して研究を進めることができた。これらの計測は主として高速カメラと光学フィルターを組み合わせた広領域の観測と、探針プローブを用いた局所計測でのプラズマパラメターの計測を併用して研究を進めた。その結果、揺らぎの発生箇所がSOLの密度勾配の急峻な領域に対応しており、揺動振幅の確率密度分布pdfのガウス分布からのずれが起き始め、ちょうど勾配の低下したあたりで、pdfがガンマ分布に近い形で著しく歪むことを見いだした。ガウス分布からのずれの大きい領域はメゾ系としての特徴をもつ現象を支配するサイズと考えることができ、この研究をさらに発展させて、マクロなプラズマ輸送との結合を調べるために、プラズマの流れの2次元計測法の開発に取り組んだ。こうして限られた実験期間と装置の立ち上がり期の制約の下での21-23年度の研究に於いて著しい成果を挙げることができ, 本研究と相補的な課題である "乱流場における偶然力の可視化"(萌芽研究H23-25)や 本研究の発展として、核融合炉の定常化に向けた重要課題である"多階層複雑・開放系における粒子循環物理とマクロ制御"(基盤SH24-28)という研究に発展させることができた。
|