本研究では、ナノサイズの微小空間を利用して核種を分離する革新的な高精度核種分離システムの構築を目指している。申請者は、最近ナノ空間を有するカーボンナノチューブ(以降ナノチューブ)などに、三価アクチノイド(An(III))が三価ランタノイド(Ln(III))よりも選択的に吸着され、これによりAn(III)がLn(III)から吸着分離できるという現象を発見した。本研究の目的は、この吸着分離機構の解明を行い、ナノ空間を利用する高レベル廃液のシンプルで新しい高精度核種分離システムを構築することにある。 当該年度については、主にバッチ法による分離試験を対象となるランタノイド全元素にわたって行い、分離条件の探索および次年度以降のX線を用いた分光法を開始した。 1)分離試験 分離試験においては、より系統的にデータの取得に努めた。未処理の活性炭、グラファイト、ナノチューブを用いて、各種元素のバッチ分離試験を行った。その結果、官能基の効果ばかりでなく比表面積(BET測定)やナノサイズのサイズ効果により、An(III)とLn(III)が吸着されていることが明らかとなった。また、U(VI)やPu(IV)など他のアクチノイドを用いた吸着試験を行い、これらがより酸性条件下で吸着することも見いだした。 2)分光測定 分光測定に関しては、復旧状況に応じて、X線分光をさらに系統的に行い、吸着された金属の電子状態の解明への知見を得ることも検討する。
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