研究課題/領域番号 |
21246146
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小澤 正基 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 教授 (80421527)
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研究分担者 |
佐々木 祐二 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門, 研究員 (20354839)
大橋 朗 茨城大学, 理学部, 准教授 (50344833)
池田 泰久 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 教授 (40323836)
三村 均 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10091753)
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研究期間 (年度) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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キーワード | MIDAA / Tc / Re / 新抽出剤 / 核種分離 / 錯体構造 / 元素変換 / 中性子捕獲反応 |
研究概要 |
MIDOA/ドデカン抽出溶媒を用い、硝酸溶液系に加え塩酸系での抽出性能マッピングの作成を進めた。Os、Ir、Pd、Pt、Au、Hgの分配比は、Irを除き全て100を超えることにより、単段抽出で99%の金属の回収が示唆された。向流多段抽出、等の手法を用いることで、大量の溶液処理が可能な貴金属分離技術が可能となった。本抽出反応ではソフトドナーである窒素原子が大きく関わっている。一方、MIDAAを配位子とする Re(VII)錯体の合成を試み、その結晶が得られることを確認した。Tc(VII) (TcO4-)は、金属陽イオンとイオン対を形成し、抽出時、他の金属イオンとともに有機相中に抽出される。Re(VII)(ReO4-)もまた同様の性質を有することが予想された。そこで類縁体であるIDEAを抽出剤として用いReO4-とランタノイド(III)種の錯形成について検討し、ReO4-はEu(III)及びSm(III)と、[Ln(IDEA)3]3+[Ln(NO3)4(ReO4)2]3-[Ln(NO3)5(ReO4)]3-(Ln = Eu, Sm)錯体を形成し、IDEAは3座で配位していることを明らかにした。MIDOAをアルギネートキセロゲルに内包したマイクロカプセル(MIDOA-MC)へのPd, Os, Ir, Pt, Au, Hgの吸着特性を調べ、高濃度塩酸溶液からOs、Pt、AuおよびHgを1時間以内にほぼ100%吸着できることを見出した。Pdの吸着容量は0.5 mmol/gであり、チオ尿素により定量的に溶離可能であった。中性子捕獲反応によるレアメタル創成では、軽水炉条件では第5周期遷移元素への変換率が高く(例えばRh→Pd:>20%/y)、重希土類への元素変換効率は高速炉条件で高い(例えばTb→Dy:>15%/y)という、異なる傾向が明らかとなった。元素変換創成Pdの放射性は極低で、免除レベルを大きく下回る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新抽出剤MIDOAについては、Os、Au、Ptなど各種貴金属元素を始めとしてVII族のTc、 Reについて、それぞれ高い抽出能を把握できた。金属錯体構造を把握し、酸解離定数を算出して抽出挙動とプロトネーションとの関連性を明らかにできた。また、錯体の基準物質としての、Re-MIDOA結晶を合成することができ、今後の応用研究への利用性についても目処が立てることができた。中性子捕獲反応よる元素変換では、核分裂生成物元素に関し、元素別、炉型別の元素変換効率の傾向を把握し、幾つかの創成レアメタルについては同位体組成及び放射化学安全性に関するデータを取得している。
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今後の研究の推進方策 |
非放射性のReを用いてRe錯体の血しょうや体液組成での安定性測定に関する研究を進め、核医学研究への利用可能性について知見を得る。一方、MIDOAについて塩酸及び硝酸溶液から白金族を含めた貴金属について、高い抽出反応性があることが見いだされている。この分離回収能力について関連情報を取得し、性能を評価することを今後の研究方針に加える。MIDOA-MCのレアメタルへの吸着特性評価をもとに、各元素のクロマトグラフィ分離を実施し、分離特性を明らかにする。関連して、炭素鎖長のことなるジアミド試薬の合成と抽出試薬としての基礎的データ収集を継続する。中性子捕獲反応による核分裂生成物の元素変換では希土類元素に特化した研究を行う。
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