分裂酵母をモデル生物としてRNAi依存性ヘテロクロマチン形成・機能に関与する因子のスクリーニングをデータベース情報を中心にした逆遺伝学的手法によりおこない、10以上の因子を得た。それらの因子のほとんどはRNAポリメラーゼII(RNAPII)の転写や転写後のRNAプロセシングを制御する因子であり、転写とヘテロクロマチン形成・機能の間に強い機能的相関があることが示唆された。またいずれの変異もヘテロクロマチンによる転写抑制がエピジェネティックに変動するという特異な表現型を示し、ヘテロクロマチン内転写の特殊な機能が示唆された。 特に転写および転写産物であるRNAのプロセシング転写にともなうクロマチン制御などを統括的に制御するRNAPIIの最大サブユニットのC-terminal repeat domain(CTD)のリン酸化に着目して解析をおこない、CTDの7番目のリン酸化は従来機能がはっきりとしていなかったが、RNAi機構を介したヘテロクロマチン形成に必須であることがわかった。一方、CTDの2番目のリン酸化はヘテロクロマチン内での転写産物の分解による過程に機能すること、つまりヘテロクロマチンによる転写後抑制の過程に必要なことが明らかになった。これらの結果はCTDのリン酸化はある種の分子スイッチと機能し、それぞれのリン酸化が独立にヘテロクロマチン形成が・機能を制御するという新しいメカニズムが明らかになった。これらの結果は、転写装置が単にRNAの合成だけでなく、クロマチン構造やRNAプロセシングなど広範な機能制御をおこなっていることを示唆している。
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