研究課題
平成24年度は,平成23年度に引き続き,琵琶湖北湖湖心における定期的な層別採水を行い,Chl dを含むシアノバクテリアAcaryochloris spp.の鉛直分布とその通年変動を解析した。特に,昨年度に見出された「琵琶湖に分布する浮遊性のAcaryochloris spp.が各深度の環境に適応した生態型に種内分化している可能性」について検討した。具体的には,リアルタイムPCR法によるAcaryochloris spp.の定量に加えて,PCR-DGGE法によって,各月の各水深に出現するAcaryochloris spp.の遺伝型の多様性を解析した。平成24年の成層期(7月-9月)においても,平成23年と同様に水深10-20 mおよび40-50 mの2つの水深にAcaryochloris spp.の分布ピークが存在した。このことは成層期の異なる2つの水深にAcaryochloris spp.の出現ピークが現れることが毎年繰り返されており,浅層型と深層型のAcaryochloris spp.が琵琶湖内に恒常的に存在する可能性を示唆した。成層期に出現するAcaryochloris spp.の16S rDNAおよびITS領域の多様性を調べたところ,複数の遺伝子型が検出された。また,浅層型と深層型の違いは,種内変異だけではなく,種レベルで異なるAcaryochlorisが存在している可能性も示された。これらの結果は,Chl dが琵琶湖生態系における一次生産に恒常的に寄与しているとともに,琵琶湖のAcaryochloris spp.には属内あるいは種内で適応分化が起こっている可能性を示している。浮遊型のAcaryochloris spp.の分離・培養には成功しなかったため,浅層型と深層型の生理学的違いを明らかにすることができなかった。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2012 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (15件) (うち招待講演 1件)
Microbes and Environments
巻: 27 ページ: 217-225
10.1264/jsme2.ME11295
Proc. Natl. Acad. Sci. USA
巻: 109 ページ: 17328-17335
10.1073/pnas.1207347109
生物の科学 遺伝
巻: 66 ページ: 413-419