研究概要 |
21年度は、以下の諸点について実験的研究を行った。 チョウ類色覚系の進化学的解析:原始的なアゲハチョウとされるウスバシロチョウ(Parnassius glacialis)複眼から4種の視物質オプシンmRNAを(PgUY,PgB,PgL2,PgL3)を同定した。個眼構造を組織学的に解明すると同時に、4種のオプシンmRNAを発現する視細胞を確定した。PgL3は腹側にのみ発現していた。ウスバシロチョウ複眼では背側部分が他目の昆虫種とも共通する"祖先的な"オプシン分布を示すのに対し、腹側部分ではPgUVとPgBの重複発現やPgL2とPgL3の相補的発現など、他には見られない極めて複雑な分布パターンが認められた。この多様化はウスバシロチョウ亜科の分岐後に起きたものと考えられる。さらにこれまでに視物質の発現パターンの解析を終えていたシロチョウ科モンキチョウ(Colias erate)について、視細胞分光感度を電気生理学的に調べた。結果、少なくとも6種類の感度が得られた 視葉ニューロン群の解剖学的解析:視葉から脳への出力を、視葉各所への色素注入によって検索した。また、視葉板における視覚二次ニューロン(LMC)の多様性を解析するため、各種神経伝達物質候補物質に対する抗体を用いた免疫組織化学を行なった。抗チラミン標識で、LMCが染め分けられる可能性のあることが分かった。 視葉板におけるパッチ電極法の確立:視葉板からの記録は得られるが、記録の安定性には未だ問題が残されている。さらに改良の余地がある。
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