22年度は、以下の諸点について実験的研究を行った。 チョウ類色覚系の進化学的解析:アゲハチョウ科から、キアゲハ、アオスジアゲハ、アサギタイマイ、ジャコウアゲハ、ベニモンアゲハ、ホシボシアゲハ、ギフチョウ、ヒメギフチョウ、ホソオチョウ、カバシタアゲハ、シロチョウ科から、キチョウ、ヒメシロチョウ、ツマキチョウについてオプシンmRNAを同定した。アゲハチョウ科では長波長受容型オプシンが2~4種類に重複していること、ヒメシロチョウLeptidea amurensis(マルバネシロチョウ亜科)を除くシロチョウ類では青受容型オプシンが重複していることがわかった。 ヒメシロチョウ複眼はいくつかの点で他種との違いが著しい。そのひとつが個眼面サイズのバラツキで、この傾向は雄で特に顕著である。今年度は複眼の内部構造を詳細に調べ、サイズ分布が二峰性であること、感桿構造によって個眼は3タイプに分けられること、タイプ1個眼のレンズが大きいことなどが分かった。 視葉ニュ-ロン群の解剖学的解析:昨年度に引き続き、視葉から脳への出力を、視葉各所への色素注入によって検索した。また、視葉板における視覚二次ニューロン(LMC)の多様性を解析するため、ガラス微小電極あるいはパッチ電極を用いてLMCの過分極性応答を記録、その後色素を注入してLMCの形態を調べる実験を行った。いくつかの染色像を得ることができたが、軸索の細さゆえに成功率は概して低い。そこで、より確実な方法として、顕微鏡に微分干渉用のコンデンサーを導入、視認下でLMC細胞体の記録・色素注入を行う試みを始めた。
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