研究概要 |
チョウ類色覚系の進化学的解析:これまでに4種のオプシン(CeUV, CeV1, CeV2, CeL)が同定されていたモンキチョウの複眼に、新たに青受容型オプシンCeBを発見した。CeBはCeV1とCeV2と共に、タイプ2個眼の視細胞2個に共発現していた。発現パターンに性差はなかった。一方、モンキチョウ複眼からは4種の青受容細胞の感度が記録されており、内2種が♂、2種は♀特異的で、この生理機構は不明だった。CeBの発見と合わせ、蛍光フィルター色素の分布に性差があることも発見、これらの情報を総合することで、青受容細胞の生成機構が完全に理解できた。 モンキチョウでは赤受容細胞にも著しい多様性がある。全部で6種のうち3種が♂、3種が♀特異的である。♂♀とも、赤受容細胞には緑受容型のCeLが発現しており、赤感受性は感桿周囲の赤色素のフィルター効果による。性差は、♀のタイプ2個眼の赤色素の吸収が他よりも50 nm程短波長にシフトしたものであることで説明できた。 CeBの発見、蛍光色素と赤色素の性差の発見は当初の予想を大きく覆すもので、モンキチョウ複眼の細胞構成を明確に記述する成果に繋がった。予想以上の成果が得られた。 行動学的解析:ある色の円板で蜜を得ることを学習したアゲハは、円板を探索して発見し、着地しようとする。円板と背景の明度コントラストが十分であるときは着地して蜜を吸おうとするが、明度コントラストが十分でないと円板に接近はするものの実際に着地することはできないことが分かった。明度コントラストの受容には、色覚と同じく、紫外・青・緑・赤の受容細胞が関与しているらしい。また、アゲハは求蜜に際し、偏光の振動面を識別することも分った。振動面の異なる偏光をどのように識別しているかを行動実験で詳細に調べたところ、明るさの違いとして認識していることが分った。
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