研究課題/領域番号 |
21247010
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
井上 勲 筑波大学, 生命環境系, 教授 (70168433)
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研究分担者 |
渡邉 信 筑波大学, 生命環境系, 教授 (10132870)
橋本 哲男 筑波大学, 生命環境系, 教授 (50208451)
石田 健一郎 筑波大学, 生命環境系, 教授 (30282198)
稲垣 祐司 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (50387958)
中山 剛 筑波大学, 生命環境系, 講師 (40302369)
菊地 淳 独立行政法人理化学研究所, 植物科学研究センター, チームリーダー (00321753)
守屋 繁春 独立行政法人理化学研究所, 基幹研究所, 専任研究員 (00321828)
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キーワード | 環境 / 進化 / 分類学 / 生態学 / 原生生物 |
研究概要 |
本研究では、藻類と従属栄養性真核生物(プロティスト)で構成される未知の微生物複合系が,その多様性をどのように構築・維持・崩壊させていくのかを,様々なアプローチで解明することを目的とし,生物相と環境物質を詳細にプロファイリングし,それらの時空間変動解析を試みている。平成23年度は前年度までの結果をふまえ,調査地域を富栄養海域1地点に限定し,生物と環境物質の組成や量の短期間変動に注目した。調査地とした東京湾沿岸1地点における赤潮発生期に,表層と下層の2水深を毎日定時採水し,核磁気共鳴法によるメタボローム解析と,顕微鏡下での計数による生物量把握を行った。採集地では6月から9月に,ラフィド藻類Heterosigma akashiwoや珪藻Skeletonema spp.などによる大規模な赤潮が頻発した。1回のブルームは数日から1週間程度続くが,この間に優占生物が交代し,生物量が大きく変動した。核磁気共鳴法を用いた環境メタボローム解析では,具体的な物質の特定までには至らなかったものの,糖や脂質などに由来すると推定される成分が,生物相の変化に伴って大きく変動していることを示した。一方,光学顕微鏡では同定困難な真核微生物についても,その生物量を推定するために,環境メタゲノム解析にも着手した。調査地点における真核微生物相把握に最適な遺伝子領域を選定するため,18S rDNA内の塩基置換率の高い3領域について,パイロシーケンサーを用いて予備解析を行った。また,同地点より新種の従属栄養生物の2員培養株確立にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生物相把握と環境メタボローム解析によるオミクス解析によって,赤潮形成時における生物と環境有機物質の相互作用解明という,これまでの手法とは一線を画す新規法が確立しつつある。また,次世代シーケンサーを用いた環境メタゲノム解析による大規模な生物多様性解明の基盤を構築したといえる。さらに新種の従属栄養プロティスト(ケルコゾア生物)の2員培養株を確立したほか,多数の藻類,プロティストの培養株を確保した。これにより,分類学的に新たな知見が得られただけでなく,生態的に不明な点が多いプロティストの,環境中での物質変動にあたえる影響を調査する好適な材料が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
1)さらに明瞭なデータを得るために環境メタボローム解析の手法を改良し,環境サンプルの再解析を実施し,環境物質の特定を目指す。2)生物相の詳細な解明のため,環境サンプルの次世代シーケンサーによる環境メタゲノム解析を実施し,周年および短期間における生物相の詳細な時空間変動を解明する。3)培養株を確立できた新規生物の光学顕微鏡および電子顕微鏡による詳細な形態観察を実施し,分類学的な記載を行う。
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