研究課題/領域番号 |
21247025
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
饗場 弘二 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (20025662)
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キーワード | 小分子RNA / Hfq / 翻訳抑制 / 塩基対形成 / mRNA分解 / RNaseE / 転写終結シグナル / polyU tail |
研究概要 |
解糖系の阻害が大腸菌グルコーストランスポーター遺伝子(ptsG)のの発現を転写後段階で抑制することの発見を契機とした一連の研究により、この制御にRNA結合タンパク質HfqとsRNAの1つSgrSが関与していること、SgrSはHfqを介してRNase Eと複合体を形成しptsG mRNAとの塩基対形成により翻訳の抑制とRNase Eに依存したmRNA分解を引き起こすことなどを明らかにし、原核生物におけるsRNAによる遺伝子発現制御の原理を理解するための研究を先導してきた。本研究の目的は、(1)SgrSが標的であるptsG mRNAを特異的に認識する機構、(2)Hfqが塩基対形成を促進する分子機構、(3)SgrS/Hfq/RNase E複合体によるptsG mRNA分解の分子機構と生理機能、(4)代謝ストレスがSgrSの転写を誘導する機構に焦点を当てsRNAの作動原理の解明を目指すことである。平成23年度は、主に目的(2)に沿った研究を行い、Hfq結合部位の解明を目指した。SgrSをモデルとして、一連の変異体解析からsRNAのHfq機能的結合に十分な最小領域の決定を行った。その結果、3'領域に存在するRho因子非依存性ターミネーター、及びU塩基に富む配列が直前に存在する内部ヘアピン構造を含む49塩基のRNAがHfqとの機能的な結合に必要であることを証明した。また、U塩基に富む配列がターミネーターヘアピンの直前にあれば、内部ヘアピン構造はHfqとの機能的な結合に不用であることも示し、H鉤結合モジュールには2つのタイプがあることを明らかにした。既存のsRNAは2つのタイプのいずれかのHfq結合モジュールをもつことから、本研究の意義は、Hfq結合モジュールの実体を初めて解明したことにある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)SgrSが標的であるptsG mRNAを特異的に認識する機構については、塩基対形成に必要な最小の領域の決定に成功した。(2)Hfqが塩基対形成を促進する分子機構については、Hfq結合モジュールの実体を解明した。(3)SgrS/Hfq/Rnase E複合体によるptsG mRNA分解の分子機構と生理機能については、Rnase E上のHfq結合部位の同定に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題の1つはHfq結合モジュールの最適化をめざすことである。また、最適化したHfq結合モジュールの上流に種々のmRNAの翻訳開始領域に相補的な配列を持つ人工的sRNAの解析を通して大腸菌における任意の遺伝子ノックダウン系を確立したい。Hfq結合モジュールの実体を解明したことはHfqによる塩基対形成促進機構の理解への大きなステップとなったが、さらなる展開のために、構造生物学の専門家と共同してsRNA/Hfq複合体の構造解析を目指したい。予備実験から、hfq遺伝子を多コピー存在させても、合成されるHfqタンパク質量は一定に保たれることを見出している。すなわち、Hfqはタイトに自己制御されている。この自己制御のメカニズムとその生理的意義を明らかにすることは本研究課題の今後の推進にとっても重要である。したがって、当初の研究計画には記載していないが、Hfq遺伝子の自己制御機構とその生理的意義の理解する研究も展開したい。
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