研究課題/領域番号 |
21247030
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
岸本 健雄 東京工業大学, 生命理工学研究科, 教授 (00124222)
|
キーワード | 細胞周期 / 卵細胞 / MPF / サイクリンB-Cdk1/Cdc2 / Greatwallキナーゼ / Ensa/Arpp19 / PP2A-B55 |
研究概要 |
MPF(maturation/M phase-promoting factor、卵成熟/M期促進因子)は真核細胞に普遍的なM期誘起因子であり、cyclin B-Cdc2複合体(Cdc2と略記)と同義であるとされている。しかし実際にはそうではなく、MPFは、Cdc2とGreatwall kinase(Gwl)の両者によって構成されること(MPF = Cdc2 + Gwl)を、初年度の研究により明らかにした。そこで本年度は、Gwlの機能と役割を解析し、以下の点が判明した。 (1)MPF assay(ヒトデ未成熟卵に微小注射して、被注射卵で核膜崩壊が起こるかを検定する)では、Gwlの存在は、Cdc2活性の必要量を1ケタ下げて生理的な濃度とすることを前年度に示したが、これによりはじめて、分裂期紡錘体を正常に形成できるようになることが判明した。Gwlの必要性の、生理的意義を示したといえる。 (2)Gwlの直接の標的はEnsa/Arpp19であるとの報告が他の系でなされたが、ヒトデ卵においてもそうであって、これがリン酸化されるとPP2A-B55を抑制することを確認した。 (3)他方、ヒトデ卵においては、Gwl無しでも、Cdc2は正常に活性化する。この場合、Ensa/Arpp19はCdc2によってリン酸化され、それだけでPP2A-B55を抑制することが判明した。そこで、Ensa/Arpp19のリン酸化がCdc2単独による場合と、Cdc2とGwlの両者による場合とで、Ensa/Arpp19の機能(つまりPP2A-B55抑制能)がどのように異なるのかが、新たな課題として浮上した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Gwlを介さないamplification経路については、「研究実績の概要」中の(3)に述べたように、当初の計画以上の進展が得られた。他方、Myt1とCdc25のCdc2によるリン酸化の、PP2A-B55による脱リン酸化については、それを証明できてもインパクトは低いと考えられるようになったので、研究の優先順位を下げた。
|
今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」中の(3)に述べたように、Ensa/Arpp19のリン酸化がCdc2単独による場合と、Cdc2とGwlの両者による場合とで、Ensa/Arpp19の機能(つまりPP2A-B55抑制能)がどのように異なるのかが新たな課題としてクローズアップされたので、この点の解析に注力したい。
|