研究課題/領域番号 |
21247035
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高橋 淑子 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10183857)
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研究分担者 |
齋藤 大介 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (90403360)
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キーワード | 発生・分化 / 神経科学 / 細胞・組織 / 副腎 / 細胞移動 |
研究概要 |
個体レベルでの生理機能の獲得と発揮には、各器官の個別のはたらきに加え、異なる器官同士が機能的なネットワークを形成する必要がある。そのためには、器官そしてそれを構成する細胞や組織が、体内で空間的に正しく配置されなければならない。本研究では、器官ネットワーク成立に関わる細胞の空間的配置のしくみの理解にむけて、それらを支える3次元環境内での細胞挙動とその調節機構について、多角的な視点からの解明を試みた。具体的には、末梢神経系(神経堤細胞:NC細胞)や血管系の形成機構に焦点をあて、それぞれの組織成立に関わる細胞移動や両者間にみられるクロストークなどに注目した。 NC細胞の両方においてリン酸化SMAD活性細胞の初期形成過程における交感神経系lineage細胞の移動と分化におけるBMPシグナルとケモカイン及びNeuregulin1の関係を調べたところ、NC細胞の背側大動脈への移動には、ケモカインSDF1/CXCR4及びNeuregulin1の双方とも、細胞誘引活性をもつことがわかった。一方、NC細胞の後期移動において、交感神経と副腎髄質に分かれる際には、Neuregulin1のみが誘引因子として作用することが明らかになった。このことは、NC細胞が背側大動脈付近で細胞分化する際、周辺環境から受けるシグナル感受性が巧みに変化することを示唆するものである。末梢神経系と血管との関わりの分子実体の詳細がみえてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NC細胞の体内移動の仕組みは、長年謎のまま残されていた。我々は独自にTOl2トランスポゾン法による遺伝子発現系を用いて、これらの問題に取り組んでいる。実験系が順調に動きはじめた今、次々に新規知見が得られるところとなり、NC細胞の研究分野への貢献が期待できるところまできた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究推進方針を継続させる。特にNC細胞の体内移動のしくみを、それらが遭遇する多種多様な周辺環境との相互作用の観点から明らかにする研究は、当該分野に残された大きな課題であり、これらの問題に真正面から取り組むプロジェクトを発展させたい。
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