ヒトを特徴づける性質の中で、長寿と優れた適応能力に注目した。そこで、ゲノム修復・維持関連遺伝子について、(1)ヒトと他の霊長類の比較からヒトに至る寿命延長のホミニゼーションを、(2)人類集団間でのゲノム多様性から人類の拡散を支えてきた適応の遺伝的基盤を解明することを目指す。具体的には、関連遺伝子解析と、それに基づくin vitroの細胞機能解析からのアプローチをめざした。 ゲノム保持に要となる遺伝子である癌抑制遺伝子p53については、昨年度設計した機能ドメインの比較解析をおこなうためのユニバーサルプライマーを用い、哺乳類全般における配列解析を継続した。特に、寿命との関連から、長寿の動物種を選び比較解析を進めた。一方、環境適応の観点から、近縁系統間で生活リズムの異なる種を選び、DNA修復遺伝子の配列解析と、機能解析のための予備実験をした。 ゲノム安定性に関し、機能喪失p53の活性化の影響を調べるため、齧歯類とヒトを結ぶマカクのM1通過細胞の調整をおこなった。 昨年度のp53多型のメタ分析に引き続き、上記GSTについてのメタ解析に着手し現在、地球規模における多型分布勾配に関し環境適応との関連について検討している。 リアルタイムPCR法による腫瘍関連遺伝子多型マーカーの検索条件の設定をタイの共同研究者とともにおこなった。 研究資材の開発については、有袋類を含む哺乳類約70種から380系統を継代可能とした。その中には、人類学・霊長類学領域で有用と思われる非ヒト霊長類32種255系統を含んでいる。これらは次年度以降の本研究にも、他研究にも供されるものである。
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