ヒトを特徴づける性質の中で、長寿と優れた適応能力に注目した。生き永らえるには、広い意味での生体の恒常性維持が欠かせない。それは体を構成する細胞一つ一つにも当てはまり、個体の維持にも、細胞の「暴走」は抑制・排除されなければならない。すなわち、各々の細胞がプログラムされた機能・運命を全うするには、生物の一生を通じて、情報を担うゲノムを守り・維持することが肝要であり、その能力が個体寿命の長短に関連している。そこで、ゲノム修復・維持関連遺伝子について、(1)ヒトと他の霊長類の比較からヒトに至る寿命延長のホミニゼーションを、(2)人類集団間でのゲノム多様性から人類の拡散を支えてきた適応の遺伝的基盤を解明することを目指した。 解毒代謝経路には、第1相と第2相があるが、本年度は第2相に焦点を当てた、欠失変異が知られているGSTM1はこれまで、「欠失ホモ接合」対「野生型ホモ接合+ヘテロ接合」で疾患感受性が検討されてきたが、遺伝子型データの取得が望まれていた。そこで、欠失型アリールを容易に検出できるPCRの系の改良をおこない集団スクリーニングを可能とした。欠失ホモ接合の分布に関しては、GSTT1ホモ欠失と併せ、メタ分析をすすめ、地理的勾配を見いだした。 研究資材の開発については引き続き、新たに有袋類を含む哺乳類23系統の培養をおこなった。とした。その中には、人類学・霊長類学領域で有用と思われる非ヒト霊長類30数種を含んでいる。これら、広く他研究にも供されるものである。
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