研究概要 |
本年度は、皮膚温度感受性の脱順化と局所耐寒性の熱帯・温帯出生地地域差に関する研究を行った。 (1)日本人男子学生11名と熱帯地に出生生育後に九州大学に留学中の男子学生13名を対象に皮膚温度感受性について実験検討した。熱帯出生者は、九州大学のある福岡市に5~61カ月滞在していた。気温28℃(RH50%)の人工気候室内で、皮膚温度感受性測定装置を使用して、温感、冷感等を身体12部位について測定した。その結果、1)熱帯出生者の福岡滞在期間と温感や冷感の皮膚温度感受性の間には相関は認められなかった。2)熱帯出生者は、温感、熱さ感、涼感、冷感が、温帯出生者と比較して各々、3.3,3.5,4.2,7.3℃有意に敏感でないことが示された。3)中性温度域幅は、熱帯出生者が温帯出生者と比較して有意に大きいことが示された。これらの結果から、熱帯出生者は少なくと61カ月の期間は温帯地域に居住しても、皮膚温度感受性の暑熱適応は低減しないことが明らかとなった。 (2)日本人男子学生13名と熱帯地に出生生育後に九州大学に留学中の男子学生11名を対象に局所耐寒性を人工気候室内(28.5℃、RH54%)で実験検討した。局所耐寒性は中指を4.3℃冷水中に30分間浸漬することにより測定した。実験中、直腸温、各部皮膚温、皮膚血流量、血圧および主観申告(痛覚等)を連続測定し、日本人と熱帯出生者の生理心理反応を比較検討した。その結果、1)熱帯出生者の冷水中の最低、最高および平均指先皮膚温は、温帯出生者の値よりも有意に低値を示した。2)熱帯出生者の冷水中最後の手背皮膚温は、温帯出生者よりも有意に3℃低いことが認められた。
|