研究概要 |
Dynamin-Related Protein(DRP)遺伝子はシロイヌナズナゲノム中に16個存在し,分子構造からDRP1~6という6種に分類されている(6).このうち,DRP1とDRP2がエンドサイトーシスに関与することが予想されている.シロイヌナズナのDRP2グループには,DRP2AとDRP2Bの2遺伝子が存在し,コードされているアミノ酸配列は互いに高い相同性(92%)を持っている.本年度はDRP2AとDRP2Bの機能,発現部位,細胞内局在の解析と,生理的意義の解明を行った.まず,DRP2A及びDRP2B(以下2A,2Bとする)にT-DNAが挿入されている遺伝子破壊系統を用いて植物体生育における表現型の探索を行った.2A,2BそれぞれのT-DNA挿入ホモ系統についてその表現型を観察したが,野生株との間で生育や種子形成に明確な差異は見られなかった.そこで,2a2b二重変異系統の作出を目指したが,そのような個体は得られず,遺伝子型がAabbやaaBbとなっているものも得られなかった.2Aおよび2B座へのT-DNA挿入が共にヘテロとなっている変異株(AaBb)と野生株との間で正逆交雑をした結果,変異株を雌雄どちらの親株として用いても,遺伝子型がAaBbとなるような個体は得られなかった.さらに,ヘテロ変異株(AaBb)の花粉及び胚のうを観察したところ,それぞれ約4分の1の配偶体において形態形成が途中の段階で停止していたことから,雌雄両配偶体において遺伝子型がabになると致死となることが判明した.次に,GUSレポーター遺伝子導入個体を観察し2Aと2Bの発現部位をそれぞれ解析した.2Aおよび2Bが配偶体だけでなく植物体全体において機能していることが示唆された.また,特に根,茎頂分裂組織シリークなどで強い発現が見られたことから,これらの器官においてはさらに重要な役割を果たしていることが示唆された.
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