研究概要 |
高等植物のエンドサイトーシスには,ダイナミン様タンパク質DRP1とDRP2の二つのグループのタンパク質がかかわっていることがわかってきた.DRP2をコードする遺伝子としてDRP2AとDRP2Bの2つのパラログが存在し,これらの遺伝子にコードされているアミノ酸配列は互いに高い相同性(92%)を持っている. 本年度は,DRP2A及びDRP2B(以下2A,2Bとする)にT-DNAが挿入されているシロイヌナズナの遺伝子破壊系統を用いて植物体生育における表現型の観察を行った.2A,2Bそれぞれの遺伝子破壊系統(drp2aaBB,drp2AAbb)についてその表現型を観察したが,野生株との間で生育や種子形成に明確な差異は見られなかった.そこで,二重変異系統(drp2aabb)の作出を目指したが,そのような個体は得られなかったばかりでなく,遺伝子型がdrp2Aabbやdrp2aaBbとなっているものも得られなかった.この結果から,2A,2Bが配偶体形成への関与が疑われた.そこで,2A,2B座が共にヘテロとなっている変異株(drp2AaBb),と野生株(drp2AABB)との間で正逆交雑を行った.その結果,変異株を雌雄どちらの親株として用いても,遺伝子型がdrp2AaBbとなるような個体は得られず,雌雄両配偶体において遺伝子型がdrp2abになると致死となることが示された.そこでDRP2の変異が配偶体形成過程のどの段階に関与しているかを調べたところ,雄性配偶体では,正常花粉では3核となっている時期においても,2核の状態で停止していた.また,雌性配偶体である胚のうでは,細胞の形態や核の個数,配置に異常が見られた.以上の結果から,雌雄両方の配偶体形成において,DRP2AおよびDRP2Bのいずれか1コピーが機能することが必要だということが示された. これまでにエンドサイトーシスの際にDRP1,DRP2およびクラスリンタンパク質が細胞膜上で共局在することを示した.本年度は,DRP1がエンドサイトーシスの小胞形成の際にリング状に集合しGTPase活性を利用した機械化学的な方法でピットの切り離しが行われることを明らかにした.
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