研究課題
ファイトプラズマ(Phytoplasma属細菌)は、ヨコバイなどの昆虫により媒介され、動植物宿主間を水平移動する「ホストスイッチング」により感染を拡大する。本研究は、ファイトプラズマのホストスイッチングの分子機構を解明し、その防除技術の確立のための基盤構築を目的とする。研究代表者らは、ファイトプラズマを昆虫を介さずに、植物体内でのみ維持することによって、すでに昆虫伝搬能喪失変異株(OY-NIM)を作出している。今年度は、この変異株とゲノム解読を行ったファイトプラズマ株(OY-M)との比較により、昆虫伝搬に必須な因子の特定を目指した。OY-NIMでは、プラスミドpOYNIM上のORF3遺伝子が欠失しており、またOY-NIM感染植物ではORF3タンパク質の発現が認められないことから、昆虫伝搬能とORF3との関連性が推測されている。しかし、OY-NIMの別のプラスミドEcOYNIM上にORF3がコードされており、この遺伝子が発現しない原因に興味が持たれた。そこで、OY-Mが持つプラスミドEcOYMにおけるORF3の転写開始点の特定し、そのプロモーター領域を解析した。まず、OY-M感染昆虫のRNAを用いてORF3の5'-RACEを行ったところ、OY-MのORF3は2つの転写開始点を持つことが明らかとなった。次に、ORF3の各転写開始点におけるプロモーターを推測し、EcOYNIMにその保存配列が存在するか調べたところ、EcOYNIMでは2つのプロモーターのうち1つは配列が変異し、1つは欠落していた。以上より、OY-NIMのORF3は、遺伝子の欠失及びプロモーターの機能欠損により発現不能になったと考えられ、ORF3と昆虫伝搬能との関連性が強く示唆された。
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