研究概要 |
ファイトプラズマは昆虫媒介性の植物病原細菌であり,植物・昆虫両宿主に適応するためのメカニズムに興味が持たれている.ファイトプラズマの多くはプラスミドを保持しているが,プラスミドは特殊な環境に適応するための遺伝子をコードする例が多いため,ファイトプラズマの宿主適応とプラスミドとの関連性が指摘されている.Gandidatus Phytoplasma astehs,OY strainの昆虫伝搬能喪失株(OY-NIM)のプラスミドEcOYNIM上にコードされるorf3は,プロモーターの欠失により発現していないことを昨年度、明らかにした.また,以前の研究から,昆虫伝搬能喪失株の有するもう一つのプラスミドpOYNIMではorf3遺伝子を含む領域が欠失していることも明らかとなっており,orf3と昆虫伝搬との関連性が示唆されている.今回,昆虫伝搬能喪失後のプラスミドの変化を追うため,植物の組織培養によって約10年間維持されたOY-NIMにおけるプラスミドの遺伝子構造を経時的に解析した.1998年から2006年までのOY-NIMのEcOYNIMにおいて,orf3や複製酵素repが存在するかどうかPCR及びSouthern blottingによって解析した.その結果,orf3は2000年までバンドが検出されたが,2000年以降は検出されなかった.また複製酵素Repは2005年までバンドが検出されたが,2006年には検出されなかった.従ってNIMのORF3は2000年以降に欠失し、2006年にはプラスミド自体消失したことが明らかとなった.以上の結果をまとめると,EcOYNIMにおいて,まずorf3プロモーターが欠失した後,orf3遺伝子配列を含む周辺の領域が段階的に欠失し,最終的にはプラスミド自体がOY-NIMから消失したことが明らかとなった.以上の結果は,植物内での生存にはプラスミドが必要でないことを示しており,OYのプラスミドと昆虫伝搬能との関連性が強く示唆された.
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