研究課題
アリの性決定機構を明らかにするため、性決定遺伝子の発現機構に関する研究を前年同様に推進するとともに、特にヒアリ個体群の染色体数変異を明らかにするために、2011年12月にアルゼンチン共和国ブエノスアイレス市内の自然保護区、コスタネラ・スー自然保護区、イグアス国立公園周辺でヒアリを採集し、ブエノスアイレス大学研究室等で雌雄合計130個体(♀114個体、♂16個体)解剖、コルヒチン処理、カルノア固定を行った。その結果、ヒアリの原産地に最も近いイグアス国立公園周辺の個体群では、2n=32が最頻値で、頻度は約76%であった。それに対し、国内もしくは他の国からの移入個体群である可能性が高いブエノスアイレスでは、最頻値が2n=32あったものの、3倍体や4倍体の細胞も低頻度ながら観察された。また、最頻値の比率は約63%とフロリダに侵入したヒアリ個体群の染色体数の最頻値頻度とほぼ同じであり、統計的にイグアス個体群と有意な差があった。また、18S rDNAをプローブとしたFISH解析では、ブエノスアイレス個体群ではシグナルが多様な染色体上で観察されたのに対し、イグアス個体群ではメジャーシグナルとマイナーシグナルがそれぞれ別の1対の染色体上に安定して検出された。新たにテロメア配列をプローブにFISH解析を行ったところ、イグアス個体群では各染色体の末端にシグナルが観察されたのに対し、その他の地域ではシグナルにばらつきが見られた。特に、台湾個体群ではテロメア配列のシグナルが特定の1対の染色体全体に分布していることが明らかになった。アルゼンチン南部の地域では、ヒアリの種多様性が高く、種間交雑も示唆されている。種間雑種形成による遺伝的な多様性創出は塩基配列の多様性のみならず、染色体数や染色体上の遺伝子分布などにも影響を及ぼしていると考えられた。これは、ヒアリの防除を考える上で、雑種形成を防ぐ必要があることを強く示唆する。
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