研究課題
カイコBombyx moriは、桑葉のみを食餌とする単食性の昆虫である。桑葉にはデオキシノジリマイシンなどの糖類似アルカロイドが多量に含まれており、通常の動物には毒性を示す。カイコは、β-フルクトフラノシダーゼを中腸で大量発現することにより、桑葉を食餌として栄養を摂取できるようになった、という仮説を検証するため、カイコに近縁でありながらクワは食わずにイチジクを寄主とするイチジクカサンTrilocha varians(カイコガ科)のスクラーゼ遺伝子について解析を進めた,イチジクカサンのβ-フルクトフラノシダーゼ遺伝子はカイコと相同性が高いにもかかわらず、発現量が非常に少ないことが判明した。一方、カイコのマルターゼ型スクラーゼ(α-グルコシダーゼ)の遺伝子を探索したところ、ショウジョウバエのLarval visceral protein Hなどに相同性を示す3つの遺伝子が幼虫中腸で発現していることが判明した.いずれの発現量もβ-フルクトフラノシダーゼ遺伝子(BmSuc1)よりも低レベルであり、カイコの中腸スクラーゼの主成分はα-グルコシダーゼではなく、β-フルクトフラノシダーゼであると予想された。また、カイコの笹繭系統は、桑葉中に含まれるフラボノイドの一種、ケルセチンの5位にグルコースが結合した特殊な配糖体を合成し、繭層に蓄積させて虫体を紫外線から防護する。カイコの桑フラボノイドの利用機構の解明へ向けて解析を進るため、昨年度クローニングしたGb(緑繭b)遺伝子以外に、別の笹繭遺伝子についてもゲノム塩基配列上にマッピングした。
すべて 2010 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
FEBS Journal
巻: 277(21) ページ: 4452-4463
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
巻: 107(25) ページ: 11471-11478
http://www.ab.a.u-tokyo.ac.jp/igb/