研究課題
カイコの胚休眠は休眠ホルモンが雌蛹期の発育卵巣に作用することで誘導されるが、実際休眠が開始される時期は産卵受精後の中胚葉形成完了の胚両端部が肥大した直後である。したがって、本課題では、休眠開始および5℃処理による休眠覚醒に係わる遺伝子を単離することを目的とする。(1)カイコ母親蛹の発育卵巣に休眠ホルモンが作用することで、卵母細胞内に胚休眠にむけての準備がなされる。この一つの例として、休眠中に蓄えられる耐寒性剤であるソルビトール及びグリセロールの前駆体であるグリコーゲンの卵母細胞内蓄積が認められる。この研究では、休眠ホルモンが膜貫通型トレハラーゼ遺伝子2(trehalase-2)を活性化させ、卵母細胞膜上のTrehalase-2タンパク質発現を促進し、酵素活性を上昇させることを明らかにした。(2)休眠開始遺伝子であるpnd-1及びpnd-2では、前者が分泌型タンパク質、後者が膜貫通型タンパク質をコードすることを明らかにした。mRNA発現及びタンパク質発現の解析を、in situ hybridization、免疫組織化学法及びウエスタンイムノブロット法を用いて進めた。(3)5℃による休眠覚醒に関しては、ソルビトール利用酵素であるソルビトール脱水素酵素遺伝子2ab (sorbitol dehydrogenase-2a, 2b)の2遺伝子を新たに単離した。これらの遺伝子は、第21染色体上にタンデムに並んでいることを明らかにした。塩基配列の変異から、sorbitol dehydrogenaseがsorbitol dehydrogenase-1と-2に分かれ、さらにsorbitol dehydrogenase-2から2aと2bに分岐したと考えられた。(4)低温誘導性遺伝子の網羅的単離のために、DNAマイクロアレイ解析を進め、いくつかの新規遺伝子を単離した。
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