研究課題
(1)新たな代謝系の探索とその分子基盤本菌のセリン生合成系について、missing linkとなっていた部分をタンパク質化学的に明らかにし、さらに結晶構造解析的手法により詳細な解析を加えた。また、本菌は水素だけでなく、硫黄化合物もエネルギー源として生育できる。そこで本菌のエネルギー代謝解明の一環として、チオ硫酸酸化系について研究を進めたところ、これまで硫黄酸化に関わっていることが知られてはいなかった酵素タンパク質が本菌の硫黄代謝に関わっていることが、遺伝子破壊実験などから明らかとなった。さらに本菌は、好気的に生育するにも関わらず、その機能性のためには強い還元状態が必要な還元的TCAサイクルを機能させている。そのため、活性酸素除去システムが旺盛に機能していることが予想された。実際、フェリパーオキシンと名付けた酵素タンパク質が本菌の好気的生育能を根幹的に支えていることが、フェリパーオキシン遺伝子破壊株の調製とその性状解析などから明らかになった。(2)TK-6株の特質の応用的展開本菌の水素酸化で主要な役割を担っているヒドロゲナーゼについて、どの遺伝子が重要な働きをしているのかを明らかにするために、個々のヒドロゲナーゼの破壊株を得、その生理生化学的性状解析を行った。また、本菌の代謝を電気化学的手法により制御できる可能性が示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
「新たな代謝系の探索とその分子基盤」では、アミノ酸生合成系(セリン生合成系)、イオウ代謝系、活性酸素除去系という異なる分野での代謝系探索において、全く新たな知見が続々と蓄積されつつある。さらに、「TK-6株の特質の応用的展開」においては、本菌が有する全てのヒドロゲナーゼ破壊株が得られており、加えて、本菌の代謝を電気化学的手法により制御できる可能性が示唆されてもいる。特に、電気化学的手法による制御は、細菌の代謝を外から制御できる可能性を示唆したものであり、将来的な展開余地が極めて大きいものと判断できる。こうした点から、少し遅れのある「フラックス解析」を凌駕するだけの知見が得られているものと自負している。
「新たな代謝系の探索とその分子基盤」と、「TK-6株の特質の応用的展開」とを重点的に進展させるような研究展開としたいが、「フラックス解析」も重要な事柄であるので、そちらにも軸足を置きつつ、最終的に統合できるように進展を図っていく。
すべて 2012 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 備考 (3件)
Biosci Biotech Bioch
巻: 76 ページ: 1677-1681
10.1271/bbb.120210
Febs J
巻: 279 ページ: 504-514
10.1111/j.1742-4658.2011.08443.x
J Biol Chem
巻: 287 ページ: 11934-11941
10.1074/jbc.M111.330621
Plos One
巻: 7 ページ: e34825
http://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2012/20120403-1.html
http://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2012/20120221-5.html
http://www.u-tokyo.ac.jp/ja/todai-research/research-news/novel-phosphoserine-phosphatases/