研究概要 |
アルツハイマー病(AD)の原因物質である42残基のアミロイドβタンパク質(Aβ42)は,神経細胞毒性とともに高い凝集性を示す.本研究は,Aβ42の22及び23番目にターン構造をもつ「毒性コンホマー」が会合した究極の毒性本体と考えられる「毒性オリゴマー」の立体構造を明らかにし,その結果に基づいて毒性オリゴマーを特異的に認識・排除する抗体や,毒性オリゴマーの形成を阻害する低分子化合物の開発を目的としている.今年度はまず,野生型Aβ42凝集体の分子間βシート領域に含まれるLeu-17を光反応性のL-photo-leucineに変換した誘導体を化学合成し,光アフィニティーラベリングを行なった.その結果,目的とする2-4量体のオリゴマーはウェスタンブロットによって検出されたが,極めて少量のため質量分析法により分子量を確認することはできなかった.今後,架橋収率を上げるべく光反応性基の導入位置を検討する必要がある.一方,Aβ42の毒性コンホマーに特徴的な22及び23番目におけるターン構造をとりやすくしたペプチド(E22P-Aβ10-35)を,BSAに結合したものを免疫原としてモノクローナル抗体を作成した.クローンの選別を,ターン形成能が異なる各種Aβ42変異体を用いて行なったところ,Aβ42の神経細胞毒性を阻害するモノクローナル抗体(11A1)を得ることに成功した.11A1でAD患者脳を免疫染色したところ,上記ターン領域と同じ一次配列をエピトープとする市販抗体によって染色されない神経細胞内のアミロイド蓄積物が染色された.さらに,11A1は本市販抗体に比べてAD脳抽出物中のオリゴマーに強く反応した.以上より,11A1は有用なAD診断薬になる可能性がある.
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