研究概要 |
アルツハイマー病の原因物質である42残基のアミロイドβタンパク(Aβ42)は,神経細胞毒性と高い凝集性を示す.本研究は,Aβ42の究極の毒性本体と考えられるオリゴマー(2~4量体)の立体構造を明らかにし,その結果に基づいて毒性オリゴマーを特異的に認識する抗体や,毒性オリゴマーの形成を阻害する低分子化合物の開発を目的としている.今年度の研究成果は下記の通りである. 1.Aβ42オリゴマーの立体構造解析 Aβ42の2量体は,中央部分にターン構造を有し,その両側で平行βシート構造をとると考えられている.光親和性標識により3, 4量体の立体構造を明らかにするため,2量体の固相合成をジアミノピメリン酸による架橋法で試みた.短鎖のモデル2量体の合成には成功したが,Aβ42の2量体は合成できなかった.来年度以降,架橋部位の検討ならびに合成法の改良を行なう. 2.Aβ42の凝集を阻害するタキシフォリンの阻害機構の解析とその併用剤の開発 B環を^<13>C標識したタキシフォリンとAβ42をインキュベーションして得られた凝集体を固体NMRにより分析したところ,タキシフォリンとAβ42との相互作用が認められた.今後結合部位を明らかにすべく2次元NMRの解析を進める.一方,Aβ42の産生を抑制する低分子化合物として,発がんプロモーション活性を持たないプロテインキナーゼCリガンドが注目されている.本研究代表者らが開発したアプリシアトキシン単純化アナログのフェノール性水酸基は,各種生物活性に寄与していないことを明らかにした. 3.Aβ-ΔGlu-22の物理化学的性質ならびに神経細胞毒性 AβのGlu-22が欠失した変異体の各種物理化学的性質ならびに細胞毒性を詳細に検討した結果,Glu-22の欠失は,Aβの凝集,ラジカル産生ならびにシナプス毒性を増大させることが判明した.
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