研究課題/領域番号 |
21248015
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
入江 一浩 京都大学, 農学研究科, 教授 (00168535)
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研究分担者 |
竹腰 清乃理 京都大学, 理学研究科, 教授 (10206964)
清水 孝彦 千葉大学, 医学研究院, 准教授 (40301791)
村上 一馬 京都大学, 農学研究科, 助教 (80571281)
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キーワード | アルツハイマー / Aβ42 / βアミロイド / オリゴマー / タキシフォリン / 凝集 / プロテインキナーゼC / クルクミン |
研究概要 |
本研究は、アルツハイマー病の原因物質である42残基のアミロイドβタンパク(Aβ42)の究極の毒性本体と考えられるオリゴマー(2-4量体)の立体構造を明らかにし、毒性オリゴマーを特異的に認識する抗体や、毒性オリゴマーの形成を阻害する低分子化合物の開発を目的としている。今年度の研究成果は下記の通りである。 1.Aβ42オリゴマーの立体構造解析 Aβ42のGlu-22が欠失した変異体は、野生型Aβ42と比べてオリゴマーを形成しやすい。そこで溶液NMRにより立体構造を解析する目的で、本変異体を大腸菌で発現させた。これより、NMR解析に用いる安定同位体標識体の調製が可能となった。 2.フラボノイド類によるAβ42凝集阻害機構の解析 タキシフォリンは、Aβ42の凝集を阻害するフラボノイドである。B環を13C標識したタキシフォリンと特定部位を系統的に13C標識した野生型Aβ42を混合し、得られた凝集体の2次元固体NMR測定(DARR法)を行なった。しかしながら、タキシフォリンとAβ42との間に顕著な相互作用は検出されなかった。一方、クルクミンで同様の実験を行なったところ、Aβ42の17-21番目のアミノ酸残基との有意な相互作用が認められた。さらに、酸化剤共存下で、タキシフォリンによるAβ42の凝集阻害活性が顕著に増大したことなどから、B環のオルソキノン体とAβ42のリジン残基との共有結合形成によって、凝集が阻害されていることが示唆され、LC-MSにより付加体の検出に成功した。 3.Aβ42凝集阻害剤の併用剤の開発 プロテインキナーゼC(PKC)の活性化は、Aβ42の分解を促進することが知られている。本研究代表者らが開発した新規PKC活性化剤(Aplog-1)の側鎖の構造活性相関を定量的に解析したところ、側鎖の分子疎水性がPKCアイソザイムとの結合において重要な役割を果たしていることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は特に、タキシフォリンによるAβ凝集阻害機構を、固体NMRやLC-MSなどの有機化学的手法を駆使して解析した。その結果、タキシフォリンはオルトキノンに酸化され、Aβ42の塩基性アミノ酸残基と付加体を形成することによって、Aβ42の凝集を阻害していることが示唆された。本結果は、様々なタイプのフラボノイド類のAβ42凝集活性を説明できる新しい仮説になる可能性が期待される。一方、Aβ42の分解を促進する可能性のある新規PKC活性化剤(aplog類)の構造活性相関の解析、ならびにAβ42オリゴマーの溶液NMRによる立体構造解析のための準備も完了し、今年度の交付申請書に記載した研究目的ならびに計画は達成されたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は本研究課題の4年目にあたり、当初の研究目的を達成すべく以下の研究を推進する。まず、Aβ42の毒性オリゴマーのモデルとして2量体を合成し、その構造を溶液NMRならびに固体NMRによって解析する。さらに、Aβ42の3量体モデルの作成も行なう。一方、本研究プロジェクトの初年度(2009年度)に開発され、2012年3月にIBL社から販売開始されたAβ42の毒性ターン特異抗体(11A1)の診断薬及び分子プローブとしての応用研究を、国内外の様々な研究グループとの共同研究により展開する。
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