研究課題
1.苫小牧研究林における落葉広葉樹林生態系の温暖化実験手法を確立し、温暖化処理によってミズナラ林冠木の1)落葉フェノロジーが遅くなる、2)葉中窒素含量が低下するが窒素利用効率が上昇するため、最大光合成速度は変化しない、3)フェノールなど二次代謝物質が増加する、4)植食者による被食量が低下する、5)堅果生産量が増加する、ことなどが明らかとなった。これらの成果の一部をAgrForMeteol誌に論文として発表した。2.ブナ林冠木の蒸散特性の地理変異を明らかにするため、ブナの北限に当たる黒松内、南限に当たる椎葉、および中間の川渡において樹液流計測を行った。夏期の蒸散量は黒松内で椎葉の2倍程度あり、これは主に葉面積の違いによっていること、気孔コンダクタンスの気象応答が異なっていることなどを明らかにした。これらの成果の一部をTree Physiol誌に論文として発表した。3.高山の落葉広葉樹林サイトにおいて個葉光合成能力、森林の葉面積指数および現地での微気象観測データを用いて、陸域生態系モデルによって林冠層と林床ササ層それぞれのGPPを1時間間隔で計算し、日・月・年スケールで解析をした。その結果、(1)5月から6月にかけての林冠層の個葉光合成能力とLAIの季節的変化はGPPの季節性に顕著な影響をもたらすこと、(2)8月下旬から10月までの黄葉・落葉期の光合成能力とLAIの変化パターンも秋のGPPに影響をもたらすこと、(3)モデルにて林冠木の光合成能力に年間差が無いと仮定すると森林キャノピーのGPPを最大で15%ほど過大評価してしまうこと、(4)年ごとに異なる林冠のLAIは林床への光合成有効放射の透過量に影響をもたらすため、林冠のLAIが比較的小さい年にはササのGPPが増えること、などが示された。これらの成果の一部をJPR誌に論文として発表した。
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