研究概要 |
外生菌根共生系では,個々の菌根から物理的に連絡した菌糸が伸長して、土壌中に菌糸体が発達する。本研究では,初発菌糸体間の相互作用と養分転流に着目し,菌糸体レベルでの菌根菌の実像に迫る。 (1)菌糸体ネットワークの形成過程:(1)八ヶ岳山麓のシラビソ・コメツガ林で、シラビソ、コメツガ実生に共生する菌根菌の種構成について調べた。その結果、多数の菌根菌種が共生しているが、実生ごとにその構成が異なることがわかった。来年度は、それらの菌根菌種の微細分布を調べる。 (2)光合成産物の転流ドメイン:(1)コツブタケ菌によるアカマツ菌根苗二本を,両者の菌糸体が接するように根箱で並置栽培した。二週間後、片方の苗に放射性同位元素を含む^<14>CO_2をパルスで光合成により吸収させた後,経時的オートラジオグラフィー法により,光合成産物の転流経過を調べた。その結果、双方の菌株が同じ場合には、菌糸が融合して転流ドメイン(^<14>C-光合成産物が行き渡る菌糸体領域)が拡大するが、異なる菌株の場合には、転流ドメインはラベルした苗の菌糸体内に限定され、隣接する苗の別の菌株による菌糸体内には拡大しないことがわかった。このことは、実際の森林でも、.菌根菌の菌糸間の作用によって、地下での転流ドメインが大きく変動する可能性を示唆している。(2)同菌株に感染した菌根苗で、両菌糸体の接触部の長さを実験的に3cmまで狭めても、^<14>Cの転流は隣の菌糸体への全域に及び、ほとんど影響を受けなかった。このことは、菌糸体内の^<14>Cの移動は、ほとんど抵抗が無く、一部に転流した^<14>Cは、菌糸体全体に容易に広がることを示している。
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