本研究では、木材や木質構造物が腐朽することによって本来備えていた強度を失い、自重や予期せぬ外力で破壊に至るまでの挙動をシミュレートする手法を構築することを最終目標としている。 前年度に引き続き、強制腐朽試験下で小型試験体の密度が低下する過程を詳しく迫跡した。木材における腐朽の進行速度は腐朽が進行する方向によって異なることが予想されたので、X線CT装置(SkyScan 1174)を用いて、密度分布から見た木材の腐朽進行速度の異方性を3次元的に評価することを試みた。試料にはスブルースを用い、それぞれL.R.T3方向を長軸とした、断面20mm×20mmの棒状試験体を準備した。菌の侵入面以外にエポキシ樹脂を塗布した3種類の試験体を用いて、オオウズラタケならびにカワラタケによる様々な期間の腐朽処理を施し、腐朽後のX線CT画像を密度解析した。試駿期間が終了していない部分もあり、またデータ処理が膨大になるため、完全な結論は得られていないが、繊維方向に進行する腐朽が、繊維直交方向に進行する腐朽よりもより速く進むことが明らかとなった。腐朽進行のモデル化に関しては、今年度の新しいデータでモデルをくむ時間はなかったので、前年度の二次元X線スキャナから得られるデータを用いて、適合を試みた。今回は、水分移動と共に腐朽菌が進行するという仮定の下でのシミュレーションを試みたが、比較的良い結果が得られた。 各部分の密度低下と強度の低下の関係に関しても、前年度のデータに付加する新たな結果を得ることができた。
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